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いよいよお試し移住。サバイバルグッズは必須です!?【モヤモヤ大学生の旭暮らし回想録#2】

コラム

モヤモヤ大学生の旭暮らし回想録では、現役大学院生の市川里穂さんが、大学生だった頃、豊田市旭地区に短期滞在したこと、その前後をふり返ります。田舎出身なこと、自分について、モヤモヤしていた里穂さんの目に田舎はどう写ったのでしょう? カバー・文中イラスト:るり(Twitter@kknk_1217)

第1回目のコラムはこちらから↓

 
 
ジリジリと太陽が照りつける、大学二年生の夏休みがやってきた。
 
 
同じ部屋に住むルームメイトたちは、学期末のテストが終わるとすぐに帰省していったけれど、私は5人部屋に一人で住み続けていた。一人で過ごす寂しさを感じながらも下宿先に残ったのは、もし田舎にある実家に帰省したとしても、やることがなくさらに気が滅入ってしまうのが想像できたから。
 
 
マンネリ化したバイトを続けて、ありあまる時間を潰していた。そんな中、旭でのお試し移住に向けてMessengerで高野先生と連絡を取り始めた。高野先生に持ち物を尋ねると、
 
 
「サバイバルグッズは必須です。」とのこと。
 
 
でも、 ”サバイバルグッズ ”って具体的に何を指すのか分からない。「サバイバルグッズとは」をネットで検索するうちに「旭って、うっかり遭難したり、野生動物が襲い掛かってきたりする場所なのかな」と不安が芽生えた。
 
 
 
TEDxNagoyaUで高野先生のプレゼンを見て、旭へ行くことを即日即決した私。具体的な情報が少ないので、後から心配になってくるけれど、行くのをやめようとは思わなかった。地元とは違う田舎への興味が、退路を断ってくれたからだ。
 

 
ぼちぼちと必要なものを揃えて、7月末に豊田市駅からおいでんバスに乗り込む。目的地は、さなげ-足助線の終点【百年草】。
 
豊田市駅周辺を少し過ぎると住宅街が見えていたのに、バスが進むにつれて、みるみるうちに、緑の木々が生い茂る景色へと移り変わっていく。これからの生活にどきどきしながら、窓の外を眺め続けた。
2時間ほどバスで揺られた後、【百年草】で下車した。
 
高野先生が軽トラで迎えに来てくれていた。
2か月前にTEDxで会った時と変わらない、やわらかな笑顔を見て、それまでの緊張が薄れる。
 
軽トラに乗せてもらい、うねうねした山道を走ること20分。旭地区にある、株式会社M-easyの社員寮・福蔵寺に辿りついた。
当時、高野先生の他に、5人の移住者が住んでいました
(以前、縁側の記事になった浅野陽介さんもその一人です)。
 
 
私もここを拠点にして、3週間旭地区に住む予定になっていた。

 

まずは、高野先生がそれぞれの部屋の使い方や生活の仕方を教えてくれる。
 
台所のテーブルに溢れ返りそうな野菜が目に入り胸が躍った。
トマト、なす、きゅうりといった夏野菜がテーブルいっぱいに並んでいる。どれもつやつやしていて、目で見ただけでも美味しいのが伝わる。
 
 
あからさまに喜ぶ私に、高野先生は教えてくれた。
 
 
「ここにある野菜って、近隣の人がおすそ分けしてくれるんだよね。あとここに住んでいる何人かも畑をやっているから。だから金銭面でピンチになっても、ここではとりあえず食べ物には困らない。生きてはいけるんだよね。」と。
 
それを聞いて、びっくりすると共に感心した。
 
お金に頼らずともある程度の食料があって、命をつないでいける場所って安心だなぁ…と。
 
 
同時に、かごいっぱいのトマトを見て懐かしい記憶がよみがえってきた。
そういえば、小学生のころまでお隣に住んでいたおじいちゃんおばあちゃんが、夏になると畑でとれた大きなトマトを
手渡しでくれたんだっけ。それを水で洗って、塩だけつけて丸かじりするのが大好きだったなぁ。
 
 
もう何年も前に天国に行ってしまって2人の畑もコンクリートで埋まっちゃったけれど、本当に優しかったなぁと、急に感慨深い気持ちになった。

 

その翌日は、ちょうど福蔵寺ご縁市の日でした。

福蔵寺ご縁市とは、旭地区の福蔵寺で、年3回、春・夏・秋に開催されるお寺のマルシェ。地元の人たち以外にも、市街地からたくさんの参加者が集まるイベントだ。(*今年度は新型コロナウィルスの影響により、開催中止になりました。)

この日は、30種類以上の出店があった。

流しソーメン、五平餅、ピザ、スパイスカレー、手作りパン、焼き菓子、消しゴムはんこ、ガラス細工など、大人から子どもまで楽しめる店が勢ぞろいしていた。

参加者が出し物を披露するステージもあり、地元の合唱団が歌ったり、落語をやったり、ピアノの連弾をしたり…とこちらもバラエティに富んでいる。高野先生は趣味のトロンボーンを演奏して、歓声をもらっていた。

年齢も住む場所もちがう人たちが、ゆるくつながり、共存している。

 

「カオスな空間だなぁ」と思った。

そしてふと、自分に意識を向けると、なんだか呼吸が深くなっている。

…とても息がしやすいことに気付く。

地元でも都会でも、“こうあるべき”に捉われて息苦しくなっていた私は「心地の良いカオス」の中に身を置きたかったのかもしれない、と感じた。

その時のご縁市で撮影した、山里混声合唱団こだまのみなさん。メンバーは旭地区や足助地区に住んでいる

実は、この福蔵寺ご縁市で、高野先生が私を旭地区の移住者のみなさんに紹介してくれた。

「えっ、一人で来たの!?」と驚かれながらも、歓迎されているのが伝わってくる。

近いうちにいつもの暮らしを見せてもらえないかお願いすると、快く「おいで~」と言ってくれて、ほぼ白紙だった3週間の予定がするするーっと埋まっていった。

市川里穂

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大学時代、モヤモヤしていた頃、TEDを聞いたことがきっかけで豊田市旭地区のお寺に飛び込み滞在。「ミライの職業訓練校」に参加し、人生のモヤモヤを更に深めつつ、...

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