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人の味をかみしめる、田舎暮らしの毎日【いいかげん移住体験記#6】

コラム

いいかげん移住体験記では、2020年4月に豊田の田舎に移住した大山眞記子さんが、そこに至るまでのこと、移住してみて、をタイムリーに綴っていきます。きっちりしすぎない”いい加減”と、ちょうどいい意味での”良い加減”な体験記、はじまります。カバーイラスト:konoirokonoiroillustration

前回のコラムはこちら↓

 

2020.5月

 

引っ越したばかりの築約100年の古民家。

軒先にはツバメが巣作りをはじめました。

空は青く、光や風が心地いい春日、いつもの食事も外で食べるだけでご馳走です。

畑を耕し、野菜を植えようと作業していると

「何植えとるんやー?」「これ植えてみー」

ご近所さんが気にかけてくださり、次々と苗や種を分けてくださいます。

芽がでるたびにはしゃいでいたのは子どもたちよりも私の方でしたね 笑

育苗って面白いです。

 

念願の田んぼもいよいよ準備開始です。

苗の手配、代搔き、畦塗り、すべて近所の方に聞き習いながら実践します。

田植えは手植え経験のある友人たちに手伝ってもらいました。

子どもらも初めての経験で最初は様子をうかがっていましたが、最後には田んぼで泳ぎだし全身泥んこになって大はしゃぎしていました。

山では山菜が採れはじめていました。

そうとは知らず過ごしていた我が家でしたが、

「こんなの食うたことあるかー?」「うまいど!食うてみー」と方々のご近所さんから毎日のように届けていただきました。

こごみ、たらの芽、こしあぶら、わらび、うど、などなど、ほとんど口にしたことのない山菜ばかり。

「どうやって食べるの?」とレシピを教えてもらいながら美味しくいただきます。

 

そして今年は豊作だったという竹の子。

二日に一回大袋にいっぱい掘っても追いつかないほど。

いやぁ、今年はたくさん掘って食べましたよ、手を変え味を変え毎日竹の子三昧!

生で塩漬けし保存する方法を教えてもらったので冬用にもたくさん仕込みました。

 

ご近所の鶏小屋では、初めてニワトリを間近に見せてもらいました。

驚かないかと心配していましたが名古屋コーチンさん結構温厚で、可愛い後ろ姿に癒されました。

 

 

2020.6月

 

田植えの済んだ田んぼは生き物の宝庫!のぞきこめば何かがゾゾゾーーっと動きます!

子どもらは日々水面を揺すったり音を立てたりして、おびき寄せてるんだか威嚇してるんだか 笑

どちらにしても楽しそうに様子を見ていました。

お友達が遊びに来れば、すぐに田んぼは子どもらのワクワクフィールドと化していましたね。

 

2020.7月

 

梅雨の頃、道路から家までの坂道はたくさんの紫陽花が彩ります。

多種多様で生き生きしていて、心が晴れる華やかさです。

梅や薬草の収穫が終わると、いよいよ夏野菜の収穫が始まりました。

とうもろこし、トマト、きゅうり、ナス、ピーマン、ゴーヤなど、

近所のおばちゃんが「採りにくるかー」と毎日のように畑に誘ってくださいます。子どもらも大喜び!

ご近所さんは皆、畑の名人ばかりです。

うちの畑はというと、お野菜を覆う勢いで生茂る草と格闘の日々…。草対策した方がいいですね…。今年の夏はいい勉強になりました。

 

2020.8月

 

夏休みになると、各地からお友達家族が遊びに来てくれました。

大声出してはしゃいでも文句を言う人は誰もいません。それどころか「誰か来とるー?」なんて言ってお野菜を届けてくれたり畑に誘ってくれたり、ご近所さんは皆とても友好的に関わってくださいました。

 

ありのまま、自由に過ごす我が家の夏休み。

夜には満点の星空が広がります。

火を囲みながら時間を忘れて眺める夜空は贅沢でした。

 

2020.9月

 

いよいよ稲刈り!

友人たちに力を貸していただき手で刈りました。

鎌で刈る、束ねる、はざ掛けして乾かす、の繰り返しで結構体力要ります。

子どもたちにも手伝ってもらい皆で作業を進めました。

うちの前にある大きな栗の木では、一週間くらい前から「まだかまだか」と実が落ちるのを地域の皆が楽しみにしていました。

そしてようやく「落ちたよ!」と、一緒に拾い集めます。

「皮むきどうやってやるの~?」と嘆く私に皮むき機を貸してくださり、そしてそのままご近所コミュニティの皮むき役になり、(笑)

「栗おこわ作ってみたい!」とお願いして、おばあちゃんのおこわ作りを見学させてもらい、

いただいた渋皮煮の美味しさに感動!それを伝えると、後日レシピをくださり、

栗がたくさん実をつけたことで、共通の話題と多くの時間を共有することが出来ました。

そして、その後開催された地域の女子会とも言えるおばあちゃん達の持ち寄りごはん会に呼んでいただけたのはすごく嬉しかった!!

心がグッと近づいたような、そんな気持ちでした。

自然が地域をつなぐんだなぁと、何より嬉しい秋の大収穫でした!

 

2020.10月

 

秋の恵みはまだまだ続きます!

人参やサツマイモ、インゲン豆やかぼちゃなど、スーパーにはない形やサイズの活き活きしたお野菜を、近所のおばちゃんの畑で収穫のお手伝い!

味も濃くて美味しい!

子どもらも自分で採ったお野菜ならばと、苦手なものにもトライする姿が見られるようになりました。

心地いい秋晴れの日々。

日中は薄手で過ごせますが、朝晩は肌寒くなってきたので掘りごたつに火を入れました。

豆炭のじんわりと温かい熱。一度炭を入れると3日くらい持ちます。

火のつけ方や灰のかぶせ方も 知らない私たちにご近所さんが集まって教えてくださいました。

田んぼでは、はざかけして乾かしておいた稲を脱穀します。

蔵に眠っていた足踏み脱穀機と唐箕(とうみ)を使用しました。

まずは脱穀機。

稲を束にし、足踏みして回っているドラム部分にあてると多数の突起が籾を弾きとってくれます。

そしてそれを風圧で、実の入っている籾(重い)と、殻やクズ(軽い)とに分けていくのが唐箕(とうみ)です。

これらの民具のサウンドとリズムがとても心地よかった!ついつい合いの手を入れたくなるような調子なんですよ!

成果は半日かけて1/3(約40キロ)でした。

残りはハーベスターという脱穀機を使用しましたがものの30分で全部出来てしまいました!やっぱり凄いですね!

どちらも体験できたということがとても良かったです。

そしてその新米で、我が家初の収穫祭「新米で五平餅をつくる会」を開催!!

朝から近所のおばちゃんも割烹着で集まってくれて、精米、タレ作り、火起こしなども手伝ってくださいました。

実は数日前から五平餅の作り方を手解きいただけないかとお願いしていたんです。

五平餅に必要な台やほせ(五平餅の木の棒)も「持ってけ持ってけー」とほとんど貸してくださいました。

「昨日はドキドキして寝れんかったわー」と笑いながら羽釜で新米を炊きます。水加減や火加減もおばちゃんの感覚に頼らせてもらいながら進めました。

はじめちょろちょろ なかぱっぱ あかごないてもふたとるな~♪でもふたとらにゃみえん~♪

「ほれ!炊けた!」

しゃもじに乗って運ばれてきた湯気立ち上る一口のご飯は、ピッカピカでツッヤツヤ!!

手にとってハフハフと頬張ります!うん!いい香り!

ほろっとほぐれる!わぁ甘い!めっちゃ美味しい!もう最高!!!

うちで作ったお米の美味しさにじんわりじんわり、嬉しさが込み上げます。

そんな炊きたての感動米を木の棒でついて半殺し(半分潰し)にしていきます。

一握り分を軽く丸め、それをほせに押し当てるようにしてくっつけて成形。

炭火でゆっくり炙り、少し硬くなった餅の表面にたっぷりタレをつけ、もう一度炙ります。

味噌ネギタレはひろえさん作、醤油タレはみつえさん作、正真正銘大野瀬の味です!

しばらくすると香ばしくて甘ーい匂いがたってきました。

稲武産お野菜としいたけがたっぷり入った豚汁も完成し、

それではみんなで「いただきまーす!!」

子どもも大人も、お兄ちゃんもお姉ちゃんも、おっちゃんもおばちゃんも、ここではみんな同じ顔!いい笑顔!

心もお腹も満たされた幸せな時でした。

 

今感じること。

 

私はご縁あって豊田市の山間部大野瀬町に移住しましたが、街の暮らしも嫌いではありません。街には街の良さがあると感じます。

そして同じようにここにはここの良さがある!

中でも一番は「人の味」みたいなものを感じる機会が多いことです。

「人の味」って?

これは誰にでもあって、その人の性格とか状況とか人柄とか背景とか体調とか、安定してるように見えて日々変化してもおかしくないそういうものです。

人のそれを味わうか味わないか。

味わう機会があるかないか、とも言えるかもしれないですね。

「今日は家の草を刈るんだわ」

「大根をたくあん用にとって干しとるよ」

「餅にカビが生えたわー」

「最近車がキキキーと音たてるんだわ」

こういった自分の身近なことって、そんなには人に話さないのが言わば常識的だと思っていましたが、こちらでは違います。皆さんびっくりするくらい自分の事を話してくれるんです!

最初は驚きました。

そんな事言われてもなぁ…と思うこともありましたよ。

だけどこういった話の中に困りごとや心配事が隠れている場合もあり、

家族と同じで互いの日々の変化を日常的に知る事が、相手との関係を作っているなぁと感じるようになっていったんです。

今ではもっと知りたい!知り合いたい!と、私も自分のことをいろいろ話すようにしています。

相手を知り関わることで生まれる関係。

私はこれが「人の味」なのではないかと感じています。

でもね、これは考えてみると、田舎だからと特別なことではない気もするんですよ。

挨拶するかしないかで見える景色が変わるように、

心の変化から見える世界はどこにでも存在できるんじゃないかなって思います。

そう思うと世界は希望に満ち溢れているなぁ~って、ね。

 

これから

 

我が家の暮らしを山村移住モデルとして、私が今体験している地域の方との暮らしや、夫の古民家リノベ、子どもの成長、田んぼや畑など、ありのままをご興味のある方に紹介していきたいと考えいます。

そして稲武はもちろん近隣の長野県や岐阜県ともつながりを持ち、”暮らしそのもの”を子どもも大人も一緒に体験してもらえるような機会を作っていきたい!そう願っています。

来年度には新たな挑戦が始まります!

未知な世界への挑戦です!

ホップ!ステップ!ジャンプ!の第一歩と言ったところでしょうか 笑

詳細はFacebookInstagramで随時紹介していこうと思いますので、よかったらフォローをよろしくお願いします。

さて、寂しくもコラムはこれをもって最終回となりますが、大山家の山暮らしはまだまだ続きます。

新たな道を進んだり登ったり、戻ったり下ったり、きっとこれからも珍道中を繰り広げていくんだろうな 笑

「慌てず、焦らず、ゆっくりいそぐ」

今後もこれを家訓に大山家らしく、そして私らしくいきたいと思います。

お読みいただいてありがとうございました。

そしてメディア縁側の皆さまには心から感謝いたします。ありがとうございました。

大山眞記子

大山眞記子

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京都府亀岡市出身。2020年春、稲武の築100年古民家へ家族で移住した2児の母。自然豊かなこの場所で地域と繋がりながら「農を楽しみ、恵みをいただき、休む」そ...

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