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ミシン、自転車どっちも仕事!関東から移住・就職し4年目の今、遠藤さんが思うこと|座談会レポート

レポート

2018年、関東から稲武地区に移住し、自動車内装シートの裁断・縫製をおこなうトヨタケ工業株式会社に入社した遠藤颯(えんどうはやて)さん。

ミシンで縫う仕事の傍ら、マウンテンバイクのトレイル開拓とツアーガイドをやり、幼い頃から大好きだった自転車に関わることも、仕事としてやれるようになりました。

縁側では、遠藤さんに取材させていただき、就職活動で感じていたこと、入社するまでの経緯、日々の活動についてこちらの記事にまとめました。

遠藤さんが入社してから4年。仕事や暮らしに変化はあったのか、初めの頃に感じていた充実感はそのままなのか…。

2022年5月7日(土)、遠藤さんに会いに行き、ミシンとマウンテンバイクの仕事両方を体験する「遊びながら働き方を考えるツアー」を実施しました(ツアー全体のレポートはこちら)。ツアー午後の座談会では、まさに遠藤さんが開拓に携わった中当町のトレイルを会場として、遠藤さん、横田社長、中さん、古橋さんに、近況を伺うことができましたので、ご紹介します。


 

『人集め』の流れで浮かんだ『自転車』というアイデア

 

きうら トヨタケ工業のみなさん、INABU BASE Project(以下、IBP)と素敵なロゴが入っているTシャツを着ていますね。まずは、このIBPというのは何なのか?始まった経緯について、まずは横田社長にご説明いただきたいと思います。

横田社長 トヨタケ工業がある稲武地区は、過疎高齢化で毎年2%ずつ人口減少しています。会社の10年後を想像した時に、半数以上が60歳になるということが見えてきました。そこで、じゃあどうやって人集めをしようかと。そう、最初は下心に『人集め』があったんです(笑)。

まず、2015年にOPEN INABUという活動をスタートさせました。市政10周年事業で豊田市中心部と山村地域をつなぐ市民事業のための補助金制度ができたということを知り、提案したところ採択されました。内容は、田舎暮らしをしたい家族が、『旦那さんが畑をやって、奥さんがトヨタケで働いて、空き家に住む』というスタイルが稲武で叶えられますよとPRすることでした。(下の写真 旗のマーク)青がトヨタケで、緑が畑、茶色が空き家を表しています。

でも、いざ活動を始めてみると、働くところや住むところは稲武以外にもあって、わざわざ来ようという話になかなかならない。「工場では働きたくない」「製造業って、きついんでしょ?!」ということも言われ、私たちがPRしたいことと受け取る側のイメージに、すごく差があるなと。

OPEN INABUの活動2年目に入る時に、補助金申請の関係で、1年目とは違う提案をする必要が出てきました。そんな時、私はもともと自転車が好きで、仲間に「通勤途中に山をみればマウンテンバイク!」という単純な発想の話をしたことがあったと思い出しました。

稲武には、やはりハイキングにしてもどんぐりの里にしても、自然を求めてくる方が多いです。じゃあ、その自然環境を生かしてやれることは何かっていう時に、マウンテンバイク(以下MTB)だったんです。

でも、何をしていいかわからないので、とりあえず1年目は日本国内で先進的なMTBトレイルツアーをやっている方を呼んできたり、ZIP-FMのコバタクさんを呼んで来てトークセッションをしたり…。

そのうちに、稲武のMTBコースを土日に開拓するという動きが始まったんです。結構いい感じのインスタ映えする写真が撮れて、SNSで情報を発信していたところ、MTB持参で参加してくれる人が増えて来て、段々とコミュニティができてきたんですね。

僕は好きでやっているけれど、土日に誰か手伝ってもらいたいなぁって思った時に、「それは社長、仕事ですか?ボランティアですか?」という話になる。「うーん、困ったな」と(笑)。土日のイベントで収益をあげるようにすれば、平日は工場で3日働いてトータル5日間働いたことになる。まだ形になってはいなかったけれど、『こんなことを考えています』ということをホームページに載せるようになりました。

 

OPEN INABUとIBPの違いがわかりにくいのですが、OPEN INABUは工場公開したり、就農体験をしたり、稲武の情報をオープンにしましょうという活動。その中で、IBPは、MTBに特化した活動です。『平日3日工場勤務と土日はトレイルで働く』ことも含んでいます。

 

2、3年前から副業兼業が社会で言われるようになってきて、この活動も社内兼業の枠組みなんです。偶然、時代の流れに乗っかったみたいな感じもあります。事業として成り立つようにして、トヨタケ工業の中で社内兼業にするというのが、特徴かなと思います。大きくはそんな話です。

 

きうら 遠藤さんが自転車を使った働き方改革に惹かれて稲武に来たというストーリーは縁側で取材させてもらいましたが、あらためて経緯をお話しいただけますか?

 

現地に乗り込み、体験して決めるという就職スタイル

 

遠藤さん 2018年に、新卒でトヨタケ工業へ入社しました。私は神奈川県川崎市出身で、埼玉県の大学に通っていました。情報学部だったので、システムエンジニアとか、プログラマーみたいな仕事するんだろうなと漠然と考えていて、就活中の大学4年生の5月くらいに内々定を他社で頂いていました。

その前に、otakuhouseさんという自転車のコラムを多数書いている人が、IBPの記事を書いていて、気になっていました。

内々定をいただいていましたが、これから先、どういったことをやっていくのかと考えたときに、家と仕事場の行き帰り、土日の休みという形で時間が消費されていくんだろうなと…。気がつけば、IBPを思い出していました。

トヨタケのホームページ、問い合わせフォームから連絡を入れました。色々やり取りしていく中で、トレイルの開拓に携わることになり、そこでIBPとトヨタケ工業のことを詳しく知った形です。その頃開拓していた場所で、子どもたちとMTBに乗ったり遊んだりして、これは楽しいなと強く思った記憶があります。

地元で働くのもいいけれど、どうせなら稲武に移住して、ツアー業と製造業の仕事が両方できるのはなかなか欲張りだな!と思えてきました。そんな流れで、面接などを受けて、こちらへ入社する運びとなりました。

あとは実際に勢いで、こっちに移住してきちゃったという感じです。

 

横田社長 居酒屋で内定出したよね(笑)。飲みながらね。今思うと、本当失礼な話だと思うんですけれど。

少し補足すると、一緒に活動していたNPOの人からのアドバイスで、俗に言うインフルエンサーにお金を支払って、記事を書いてもらうということを、実は意図的にしていました。それを遠藤くんが見てくれたというわけです。

普通は就職サイトに登録して、という就職活動をすると思いますが、彼の場合は全然違う。SNSで見つけた記事をきっかけとして、直接問い合わせフォームからメールを送り、現地に乗り込み、体験して決めた。そういう自分で足を稼ぐスタイルは、就職活動としてすごく尖っていると思います。

普通に面接して、会社の良いところだけ見て、内定をもらって、とりあえず会社に入る。3年ぐらいでミスマッチを起こして会社を辞めてしまうことが起きる。それよりも、良い所も悪い所も見せますから、もっとディープに知ってもらって、それでも良ければ入社してもらう。もちろん、入ってみてさらにびっくり!ということは、いっぱいあると思いますけれど。

中小企業からすると、採用ってすごく大変なんですよね。なので、入ってもらう以上は、ミスマッチを極力無くしたいという想いで、やってきたつもりです。

 

きうら 遠藤さんと同じくツアーガイドをされている中さんにまだ自己紹介をしていただいていなかったですね。遠藤さんと同じタイミングで入社されたんですか?

中さん 僕は中途採用で、入ってきまして。

きうら では、自己紹介も兼ねてお願いします。

中さん 初めまして。同じトヨタケ社員の中といいます。IBPで、遠藤くんと一緒にガイドを務めさせていただいています。僕は、遠藤くんより1ヶ月だけ早く入社しています。

前の仕事は、名古屋の方で運送業をやっていました。ここに来るきっかけは、やはりトレイルの開拓整備にボランティアで参加して、こういう面白いことをやっている会社なんだぁと。「俺はずっとこのまま運送業をやっていけるのかな…」と自問自答していた時だったので、勢いでこっちに来たというのはあります。

 

きうら ありがとうございます。遠藤さんも中さんも、勢いでこちらにこられたんですね(笑)。遠藤さんは入社されて、2年経ちましたか?3年?

遠藤さん 3年経ち、今年4年目になりました。

きうら 入社して3年の間に、トレイル開拓などのMTB関連の仕事や、工場でのミシンの仕事について、どういう変化があり、現在どういう想いでいるかというところをお聞かせください。

 

 

「やっぱり、ここに来て良かった」

 

遠藤さん ミシンの仕事の方は、最初は右も左も何もわからない状況で四苦八苦しながらの現場仕事でした。振り返れば、その頃は大変な時期だったかなと思います。

現在は、企画室の生準グループという部署なんですが、内容としては新車のシートラインが立ち上がるところでのお客様や社内でのやり取りです。試作品も製作しています。並行して、自動車関係以外でも色々な試作や、シートの張り替えの仕事などもやっています。先輩社員と2人で担当しています。

IBPの仕事は、最初の1年目は、今日参加者のみなさんに走っていただくトレイルとは別のトレイルで活動していました。3日2日の働き方ではなく、何ヶ月かに1回MTB走行のイベント開催をしていました。

 

入社2〜3年目で、コロナ禍になりました。初心者のお客様にも楽しんで帰ってもらいたいねという話が出て、MTBを持っていない人たちのためにレンタルバイクも必要だねということになりました。着々と補助金などで購入させていただいたMTBが、あちらにあるものです。

あとは、場所ですね。今の場所が見つかって、一生懸命頑張ってルートを開拓してつなげていきました。ようやく、2、3年目になって軌道に乗ってきたというところです。ちょっとずつではあるんですけれども、前進しています。

先週も先々週も、そして今日も、「初めてなんだよね」というお客様にMTBに乗ってもらい、笑顔で帰っていただけるということに、すごくやりがいも感じます。まだ、月に2回くらいの開催ではあるのですが、本当に少しずつ、3日2日の働き方に向けて進んできているという実感はあります。

今年の新卒で高校生1名大学生1名が、OPEN INABUやIBPの働き方に興味を持って入社してくれました。前向きに捉えていいかなと思っています。

4年目になってきてかなりヘビーな仕事も増えてきましたが、成長はしているという実感はあって、マイペースで進んでいると思いますね。難しかったり、どうしようもできないこともあるのですが、それも含めて、自分の糧になっているように思います。ここに来てよかったなと思っています。

きうら ありがとうございます。お仕事についてのお話を伺いました。入社と同時に移住されて、暮らしについてはどのような感じでしょうか。

 

遠藤さん 稲武には13の自治区があって、トレイルは中当自治区、会社は桑原自治区、家は黒田自治区というように、それぞれで関わりがあります。

自治区やご近所の方々とは良好な関係を築けていると思いますが、僕はあまり積極的に出ていくタイプではなくて(笑)。マイペースに過ごしています。街に住んでいると、街なりに不便なことというのはたくさんあって、そういうストレスがこちらに来てからはないかなと思います。

去年までコロナで中止になっていますが、地域のお祭りにも参加しています。この地域では、山車で太鼓を引いて、2人1組で順番に動きながら太鼓を叩く、『廻り太鼓』というのがあります。その練習にも参加しています。

夏の間、夜遅くに仕事が終わってから練習に行って、結構体力使うんですよね。足を上げたり、腕を上の方から振り落として太鼓を叩いたり。でも、地域の行事に参加することで、色んな人から『遠藤くん、遠藤くん』って、存在を知ってもらえたりもしました。迎え入れてもらっているなぁって、うれしく思いますね。

田舎は、よく疎外的だという話を聞いたりしますが黒田自治区はそんなことはなくて、実際に行事を一緒にやって、楽しかったという思い出があります。地域との関わりで、大変な思いをしたことはないですね。トレイルの中当自治区もそうなんです。

僕らが大変な思いをせずに…というのはおかしいかもしれないですけれど、地元に長く住んでいるトヨタケ社員の古橋さんが地域とのパイプ役になって、土壌を作ってくれたおかげだと感じています。

 

きうら ありがとうございます。今、地元の方たちとの調整など、重要な役割を果たされているという古橋さんの名前が出ましたが、IBPがスタートして、古橋さんが地元の人たちとの中で、ご苦労されてきたことなどあれば、教えてください。

 

 

地元との調整なくして、ルート開拓は不可能

 

古橋 最初はですね、社長が、 「稲武っていいところだなぁ、 自転車で走るには最高なところだ。事業にしたい」っておっしゃって、社長何考えてるのかしら、バカなこと言ってるなぁ、って正直思いました。ズバリ社長に「何考えているんですか?!」と言ったこともありました(笑)。

MTBのことは全然知りませんでした。私自身、50数年前に自転車で名古屋から東京へ行ったり、大阪へ徹夜で走ったりと、そういうことをしていたので社長の言うことは実はわからないでもなかった。言うからには「やるっきゃないね!」と(笑)。標高の高い山から稲武の町まで、一気に下り降りるのは楽しそうだなと思うようになりました。

初めはここのトレイルとは別の場所を開拓してやっていたのですが、諸事情でそこで続けることが難しくなりました。休みの日に、遠藤くん、中くんが色々なところを探して回って、今の中当の場所を見つけてからは、地図で地権者を探して、山を使わせてもらえるよう説明に回りました。

すると、ルート予定場所の地権者のなかに名古屋にお住まいの方が二人居られて。その方たちには事前に手紙を出して、了解を得られるように訪問しました。一人の方は大変良いことだと。もう一人の方は、ダメでした。しょうがないので、その部分はルートから外すようにしました。

中当はたまたま顔見知りの地権者が多かったものですから、スムーズにことが運んだという状況です。乗れるようになった環境はなんとか維持していきたい、それを事業としてやっていきたいと思っています。

 

きうら 古橋さんは、最初は横田社長のアイデアに懐疑的だったようですが、一緒に協力するうちに、その印象は徐々に変わってきたということですか?

古橋 自分も、また50年ぶりに自転車に乗っています。

きうら 楽しんでみえるのですね。

古橋 数キロの峠道を自転車で登っていくようになっています。

横田社長 古橋さん、自転車で朝活してるよね。

きうら すごい!ありがとうございます。話題は変わりますが、中さんに、素敵なニュースがあると伺ったのですが。最近ご結婚されたということを伺いまして…

 

(会場一同拍手)

 

ご結婚されて、新しい家庭を築かれるということで、とてもおめでたいことですね。

出会いなどは?奥さんは稲武の方ではないと噂に聞きました。話せる範囲で結構ですので、お聞かせ願えますか。

 

中さん 語れることは… 。そうですね。僕は稲武だと山も近いし、楽しく遊ぶことができそうだし、プライベートも充実しそうだと思ってこっちに来て楽しく暮らしてきました。とある紹介で知り合い、4月に入籍しました。お付き合いも1年弱で、まさか相手がこっちに来たいと言うとは、正直思わなくてですね。

今住んでいる富永町は、8世帯だけの小さな集落です。つい先日も、全国テレビでも紹介されていました。とても大げさに紹介されているなぁとは思いましたが(笑)そんなところに住んでいます。

お相手はホームページのデザイナーの仕事をしていて、会社から「リモートでできる仕事だから、そっちで楽しく旦那さんと一緒に暮らしなさい」と言ってもらったみたいです。今日もゆっくり、家で畑をいじりながら過ごしています。そんな感じです。

きうら お話しくださってありがとうございます。本当におめでとうございます。


 

横田社長の「自転車」というアイデア、そこに現れた遠藤さん、中さん、地元との調整役として重要な役割を果たしている古橋さん。

今回の座談会でお話しを伺い、誰ひとり欠けても成り立たなかったInabu Base Projectがあって、目の前のトレイルができたということに
改めて感激しました。稲武の自然環境、人間関係のなかで、引き続き遠藤さんが充実感いっぱいに過ごしていかれることを願わずにはいられません!

 

 

オクダキヨミ

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山口県光市生まれの広島育ち。 ヒロシマから長野県を経て、豊田市へ2010年に移住。 生活のベースを山に置き、生産・循環的暮らしを楽しみながら、たまには都会に...

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1979年生まれ。2014年、夫のUターンに伴って豊田市山村地域・旭地区に移り住む。女性の山里暮らしを紹介した冊子「里co」ライター、おいでん・さんそんセン...

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