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【求人】製造業の社員だけれど半農半Xで働く、最初の人になる/富士産機(株)

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5月の終わり。中山間地域では、ほとんどの田んぼが田植えを終え、苗がそよそよと風に吹かれています。その後ろには、若葉のみずみずしい緑色がまぶしい山々。

 

この景色を見ることができるのは、もちろん田んぼに苗を植えている人がいるからです。ところが、近年、豊田市の中山間地域では農業従事者の高齢化が進み、管理できなくなるケースが増えています。

 

このまま耕作放棄地が増えていけば、当たり前のように目にしている美しい風景が見られなくなる日が来てしまうかもしれません。

 

「この状況をなんとかしたい」と手を挙げたのが、今回募集を行う富士産機株式会社です。週の半分は、モーターに使われるカーボンブラシの生産管理を行い、あとの半分は協力会社であるKINOファームで農作業をする人材を募集します。

 

雇用の安定を得ながら、農業をしたい。働きながら、地域の課題解決をしたい。製造業の現場も、農業の現場も知って経験を積みたい。そんな方にぜひ読み進めてもらいたい求人です。

 

でも一つ、知っておいていただきたいのは、この人材募集は、富士産機とKINOファームにとっても、全く新しい試みだということ。受け身ではなく、一緒に作っていく。そんなチャレンジ精神を持ち合わせている方は、今回の募集に至った経緯と、その背景にある想いに目を通してみてください。

信頼を積み重ね、長年やって来られた

 

豊田市駅から松平地区に向かい、国道301号線を10分ほど車で行くと、工業団地があります。その一角に見える町工場が富士産機です。

「祖父の代からやっているんですよ」

事務所で待っていてくれたのは、そのお祖父さんの孫にあたる鈴木聖人(すずきまさと)さん。

お祖父さんは、工業団地に建っている企業が加入する組合の職員だったそう。当時、その組合が所有する倉庫が空いていたため、「そこを活用して新しい会社を作ろう」と組合員が出資してできたのが富士産機でした。お祖父さんに白羽の矢が立ち、社長に。現在は、鈴木さんのお父さんがその後を引き継いでいます。

 

創業の時から事業として続けているのが、カーボンブラシ製造。モーターに使われているということですが、どんな部品なのでしょうか。

 

「普段目にすることはありませんが、身近なところで役立っています。鉛筆の芯に使われている黒鉛はわかりますか?その黒鉛の粉末がカーボンブラシの主成分です。車のパワーウインドウやワイパー、スライドドア、他にも電気工具やミシンなどに内蔵されているモーターの中に使われているのが、カーボンブラシです」

「これまでに扱ったものを全て含めると、数千種類。1つあたり1円から100円の価格帯のカーボンブラシを、1日約3万個出荷しています」

 

現在、富士産機の従業員は19名です。9時から17時まで働くフルタイム従業員が5人。その他の方たちは、9時から14時45分まで勤務するパート従業員です。約3万個もの数を、安定した品質で製造できるのは、このパート従業員の女性たちの働きによるところが大きいといいます。

「勤務年数が20年以上の方もいます。品質を保つことができているから信頼が得られる。

長く働いてくれているパートさんたちのおかげで成り立っています」

 

 

企業の中に半農半Xな働き方を作るという可能性

 

鈴木さんが富士産機に入社したのは7年前。大学卒業後、2社目に就職した会社で、先輩に「家業があるならちゃんと継いだほうがいい」とアドバイスされ、戻ってきました。

 

家業に農業を加えて、カーボン製造と農業の両方に従事する人材を雇用したい。鈴木さんがそう思うようになったのは、(一社)豊田青年会議所(JC)で委員長を務めたことがきっかけでした。

 

「JCはより良い社会づくりを目指して活動し、力をつける場所。20歳から40歳までの方なら誰でも入ることができます。僕は長年加入していて、2021年度に委員長を務めることになりました。豊田市に住んでいるいろんな人が助け合うことのできるネットワークを作ることが僕の役割だったので、『おたがいさま会議とよた』を立ち上げました」

 

隔週木曜日に毎回20人から40人ほどが参加して、オンラインで情報交換を行い、それぞれが抱える課題を共有してきた。その中で鈴木さんが特に気になったのが、中山間地域の耕作放棄地のこと。

「2020年10月に知人のやっていたイベントで知り合って以来、下山地区で農業を営むKINOファームの木下貴晴(きのしたたかはる)さんからお米を買わせてもらっています。その木下さんに、おたがいさま会議とよたで話してもらったことがありました」

 

木下さんが、地域でできなくなった田んぼを引き受けてやっていること、風景を守っていきたいという思いを持っていることに、鈴木さんは共感した。

 

「仕事として耕作放棄地の課題に取り組めないかなと思案している時、知人から “半農半X”というコンセプトを聞きました」

 

半農半Xとは、農業と他の仕事を組み合わせたライフスタイル。塩見直紀氏が1990年代半ばに提唱してから現在に至るまで、普遍的な支持を得ています。

 

「会社の中に半農半Xな働き方を作れば、仕事として耕作放棄地の課題に取り組むことができると思いつきました。木下さんに相談したところ、『できるといいですねでは始まらない。失敗してもいいから一度モデルを作りましょう』と協力してもらえることになりました」

 

富士産機としてやってみよう。鈴木さんがそう決めたのは、単なる思いつきではない。会社の将来を見据えた決断でもあった。

 

「50年近くカーボンブラシ製造という一つのことをやり続けてきました。世の中の変化がどんどん早くなっているので、柔軟に変わっていく必要があると思っています。これからは、顧客企業だけを見るのではなく、社会のために貢献する会社にならないと成り立たなくなると言われています」

 

「全国の米のうち4割は中山間地域で生産されていると聞きました。耕作放棄が進んで、4割がゼロになったら絶対困りますよね。困ってから急に農業を始めるのは難しい。なくなってはいけないものを、ちゃんと守れるようにしないといけません」

 

農の繁閑に合わせて柔軟に働く

 

半農半Xという新しい働き方を実現するため、鈴木さんは社会保険労務士と相談を重ねました。その結果、KINOファームに協力会社となってもらい、農作業を請け負うことになりました。富士産機の仕事として行うため、定款に新しく「農業」と追記しました。

 

「前例のない働き方になりますが、安心して来てもらえるよう健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険のすべてに加入します。週に2〜3日は富士産機で、残りの日はKINOファームで働いてもらいます。農繁期は、もしかしたら週末にKINOファームでの仕事が入ることがあったり、逆に冬場は1日しか行かないことがあったりするかもしれません。イレギュラーがあっても、週5日勤務が保てるように契約を交わすことになります」

 

富士産機では、納期に間に合うように生産計画を立てたり、パート従業員の方たちの仕事を割り振ったりする生産管理の仕事をすることになるそうです。時には、機械のセッティングやメンテナンスをすることもあるかもしれません。

 

「よほど不器用でなければ大丈夫です。専門的な知識も特に必要ありません。ただ、新しい働き方なので、柔軟さがあって、挑戦できる人に来ていただけるといいなと思います」

 

 

 

畑の人手、足りていません

 

富士産機を後にして、下山地区に向かう。松平地区を通り過ぎ、35分ほど車で走ったところに、手づくり工房山遊里というソーセージやハムを販売しているお店がある。KINOファームの木下さんとはここで待ち合わせをしている。

 

軽トラックに乗った木下さんが颯爽と現れ、最初に畑を案内してくれました。

「畑は5反やっています。栽培する野菜は、今年は50種類以上になるかな。野菜セットを作るために、10種類ずつできるように計画を立ててやっています」

 

それぞれに違った栽培方法があり、決まったタイミングでやらなければならないことがあるのが野菜栽培の難しさ。

 

「手が回らず、苗が草に負けてしまったり、収穫の時期を逃してしまったりすることがあります。人手があれば収穫し損ねずに販売できるんですけどね」

 

木下さんは、芽を出し始めた小さな苗を大切そうに一通り見回ると、再び軽トラに乗り、自宅への道を先導してくれました。

到着するとすぐ、自宅の脇に何枚も並べてある箱を確認しに行きました。

 

「種籾を苗箱に撒いて、苗を育てているところです。ある程度育った苗を買う人が多いですが、少しでも費用をかけず、納得したものを作るために僕は籾から育てる方法でやっています」

その後、話を伺った場所は、車庫の上にご自身で作ったというウッドデッキ。すぐ脇に、鮮やかなピンク色をしたハナモモの花が満開です。

「やってくれん?」の声が次々と

 

「僕が育ったのは、まさにここ。下山地区羽布(はぶ)町です」

 

高校卒業後、実家から機械メーカーに7年通い、その後刈谷市で暮らして3年働き、下山に戻ってきました。豊田森林組合下山事業所に11年勤めた後、農業を志しました。松平地区の農園で1年研修し、2018年4月にKINOファームとして開業届を出しました。

 

現在では、畑5反。田んぼ2町歩(=20反)を耕作しています。年間で10日ほどアルバイトに来てもらう以外は、木下さんひとりでやっているそうです。

 

「田んぼは収益化が難しいから、自給用に1反だけやろうと初めたんです。それが4年で20倍の面積になってしまいました。最初は、地域でお世話になっている人が『田んぼが空くけど、お前やらんか?』と紹介してくれて。最近は『やってくれん?』と声をかけられるようになっています」

 

「作業賃をもらって、田起こし、田植え、稲刈りをしてお米は持ち主の方にお納めする作業受託のパターンもありますが、最近多いのは『すべてお任せ』という方。お米いらないし、自由に使ってもいいからとにかく管理してほしいと言われています」

 

田んぼをやるとなれば、草刈り作業も付いてきます。一人でやるのは、20反が限界。木下さんはそう感じています。その一方で、実感しているのが米づくりの面白さ。

「とにかく美味しいお米が採れるようになりたい。どうしたら美味しくなるのか、試行錯誤しています。有機栽培でやっている田んぼ、化学肥料を入れている田んぼ、その両方を試している田んぼもあります。もっと言えば、苗箱にどれだけ籾を撒くのかから始まって、苗を植え付ける間隔、水の量、温度、自分で調整できる条件はこだわり出したらキリがないくらいあります。それに加えて、土や水の質でも変わってきます。難しい。でも誰が作っても同じにならないところが面白い」

半農半X人材、農家へのメリット

 

地域の農業者の高齢化によって、今後も依頼が増えることが予想されます。人手がとにかく足りない。でも人を雇うということはハードルが高い。その理由をこのように説明します。

 

「フルタイムで、通年雇用するのは難しいです。農繁期と農閑期があるから。忙しい時だけほしい。雇わなくても大変、雇うのも難しい。そこがジレンマです」

 

木下さんは、そんな悩みを富士産機の鈴木さんに話し、「良い方法があったら教えてください」と言ったこともありました。その鈴木さんから「半農半Xな働き方をする人材募集」のアイデアを聞き、協力会社になることを決めました。

 

「富士産機が雇用に責任を持ってくれて、農作業の忙しさに応じて働きに来てくれるのは本当にありがたいです。週の半分来てくれるお手伝いさんとして扱うつもりはありません。今は個人事業主ですが、いずれは法人化することを目指しています。今後、この下山で何がやっていけるか、一緒に考えてくれる人材として迎えます」

 

どんな人が向いていると思いますか?

 

「農業は身体だけじゃなくて頭も使います。いろんな仕事を整理して、同時に進めて管理していける人は向いていると思いますよ」

 

 

下山地区で農業を続けて4年。米と野菜の栽培で採算が合うようにやっていくことは正直難しいと感じている。けれど、やめるわけにはいかない。やめることも考えていない。

 

「やっぱり風景を壊したくない。ふるさとだから守りたいという想いがある。農業だけにこだわりすぎるとつぶれてしまうので、続けていくために、将来的には農業以外のこともやっていけたらと考えています」

富士産機の社員として週の半分ずつ、2つの現場で働く。

カーボンブラシのこと、工程管理のこと、職場の人間関係、草刈り機の使い方、農作業の流れ、野菜の種類など。1つのことだけやるよりも、たくさんのことを覚えていかなければなりません。

この環境を自分自身の成長にとって、チャンスだと思える人、2つのことをやるから2倍役に立てるとワクワクできる人、そんな人は是非応募してみてください。

地域課題解決のために会社の方向性を変えることを厭わない鈴木さん、ふるさとの景色を守るため、新たなパートナーと共に進むことを決めた木下さん。この2人と一緒に、企業版半農半Xという新しい働き方を開拓する日々が待っています。

 

富士産機株式会社 募集要項

 

雇用条件

・正社員(週5日勤務)
・残業、休日出勤(法定の範囲内であり)
・社会保険等あり
・農業に関わる備品、社用車貸与
・待遇
・工場作業、農業共に時給制、交通費支給、決算賞与あり

収入イメージ

農業、工場作業共に未経験でスタート 1か月21万円程度
農業、工場作業共に作業員レベル 1か月26万円程度
農業、工場作業共に管理者レベル 1か月28万円程度
工場長代理レベル 1か月36万円程度
上記以上は役員として活躍

 

応募締切 2022年8月20日(土)

募集説明会 2022年6月23日(木)に今回の求人に関するオンライン説明会を実施します。
      詳細・申込は、おいでん・さんそんセンターホームページをご覧ください。

 

採用情報、お問合せ、応募については、下記ボタンから富士産機株式会社ホームページをご覧ください。

問い合わせ・応募する

 

 

 

 

 

 

 

 

きうらゆか

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1979年生まれ。とよたとつながるローカルメディア縁側編集長。おいでん・さんそんセンターコーディネートスタッフ。2014年、名古屋市から豊田市旭地区に拠点を...

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撮影 永田 ゆか

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静岡県静岡市生まれ。 1997年から長久手市にあるフォトスタジオで11年間務める。 2008年フリーランスとして豊田市へ住まいを移す。 “貴方のおかげで私が...

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