ちょっと刺激的な植物たち。【今だから、からだで感じたい森の植物3回】 2021.07.02 コラム Tweet Share Hatena Pocket RSS feedly Pin it 第3回ちょっと刺激的な植物たち(足助町香嵐渓) 今回は、人間にとってちょっと毒成分を持っていて、刺激的(食べてはいけない)植物を紹介しましょう。観察場所はおなじみの香嵐渓です。春3月下旬から4月上旬にかけては、美しいカタクリ(ユリ科)が愛知県一たくさん咲き、多くの人でにぎわいます。しかし、5月以降はほとんど来訪者がいなくなり、のんびり植物を観察することができます。 ぜひ、夏にも、植物を楽しむために、香嵐渓を散策して下さい。 イラスト:北岡明彦 (その1)ナベワリ(ビャクブ科) ナベワリって、変な名前ですね。でも、本来の名前は「舐め割り」で「葉に毒があって、葉をちぎって舐めると舌がしびれて割れたようになる」という言い伝えから名付けられたといわれています。私は体験したことはありませんが、ちょっと恐い気がしますね。 でも、カタクリの花が終わった5月中~下旬に葉っぱの下側に咲く小さな花は、オシベの葯のオレンジ色を黒紫色をしたオシベの柄が取り囲み、まるで小さな「ウニの軍艦巻き」のように見えます。ですから、私のつけた名前は「軍艦巻き草」です。皆さんも、一度、花を見に来て下さいね。 ナベワリが属するビャクブ科の主であるビャクブは、中国原産の薬用植物で、地中の根に特殊なアルカロイドを含んでいて、農業用の殺虫剤やシラミ駆除のために、日本でも江戸時代から栽培していたそうです。ひょっとしたら、ナベワリにも、そんな特殊成分が含まれているかも知れませんね。 (その2)キツネノカミソリ(ヒガンバナ科) キツネノカミソリもまた変な名前ですが、これは細長い葉が剃刀(かみそり)のようで、生えている場所が狐(きつね)がいるような所というネーミングです。この草の特徴はヒガンバナと同じで、葉が枯れて地上から無くなってから、花だけが咲くという点です。カタクリと同じ頃に、若緑色の葉がたくさん出ますが、6月には黄色く変色して枯れてしまいます。そして、8月になると、突然、花芽だけが地表に現われ、8月にオレンジ色の美しい花を咲かせます。香嵐渓では、駐車場近くの山すそに多く生え、山頂付近では見られません。 科名のもとになったヒガンバナは、知多出身の作家である新見南吉さんの「ごんぎつね」にも登場し、地元では田の土手や堤防に植えられています。地中の鱗茎には毒成分のアルカロイド「コリン」を含み、漢方では痰切り薬などに使われます。 日本では墓地周辺によく植えられますが、昔、まだ火葬が一般的でなかった頃に、お墓が動物たちに掘り起こされないように、毒のヒガンバナを植えたと言われています。 キツネノカミソリは、ヒガンバナ程一般には知られていませんが、真夏に美しい花を突然咲かせますので、もう少し人気が出ても良いように思います。 (その3)マムシグサの仲間(サトイモ科) 3種類目の植物は、実の観察です。マムシグサとは、いかにも恐そうな名前ですが、これは茎の縞模様が毒蛇のマムシの体の模様とよく似ているとして名付けられたものです。確かに、濃褐色と淡褐色の2色からなるまだら模様は、マムシの模様と似ています。そして、毒成分を持っているという共通点もあります。 マムシグサ類の毒成分は、実に多く含まれます。毒は比較的軽微で、植物毒とはどんなものかを体験することができます。方法は次のとおりです。トウモロコシを実の汁で赤く染めた実を1粒、舌の上で潰します。そのまま舌の上に5秒程置いた後、吐き出します。しばらくすると、実の汁が着いた所だけ、多数の小さな針で刺されたような痛みが始まります。この痛みは10分程で消えますので、安心して下さい。でも、絶対に飲みこんだり、長い間口の中に入れないでくださいね!病院行きになりますよ!! でも、マムシグサの仲間は、いろいろ面白い生活をしています。それは、途中で性転換するということです。サトイモ科ですから、地中に芋があって、そこから葉や花が出てきます。そして、芋が小さい時は、花が咲かない子供の時代です。成長して芋がある程度大きくなると、雄花を咲かせるようになります。さらに成長して芋が最大の大きさになると、ある年、雌花を咲かせます。そうです。この仲間は、性転換する植物なのです。すごいですね。 香嵐渓は愛知県の中で、一ヶ所で最も多くのマムシグサ類が生育する場所です。スルガテンナンショウ、ミクニテンナンショウ、マムシグサ、ヤマザトマムシグサ、ウラシマソウの5種類が、ほぼ同じ場所で見られます。花は4月中旬から5月下旬にかけて、順々に咲いていきます。有名なカタクリだけでなく、目立たない花たちにも注目して下さいね。 北岡明彦2,230 views 1954年生まれ。名古屋大学農学部林学科卒。長年、愛知県の林務課に勤める。2005年度より新設された豊田市森林課へ出向。根っからの昆虫大好き少年が、植物・野... プロフィール Tweet Share Hatena Pocket RSS feedly Pin it コラム 今だから、からだで感じたい森の植物, 足助地区 コメント: 0 普通に、無理せず、背伸びせず【「喫茶室転々」マスターが語る暮らしとつながる... 見守りあう、母とスタッフの共同運営【森のちいさなようちえんで育つ おおきな... ピックアップ記事 インタビュー いつもリスペクトと感謝を胸に。野菜も人との縁も育てる秋山さん... 2020.04.09インタビュー コラム 外国の街並みは、どうしてワクワクするの?【空き家を事業に使う... 2020.04.24コラム コラム 都会志向のじゃじゃ馬娘が、豊田にたどり着いた【いいかげん移住... 2020.03.24コラム 関連記事一覧 コラム 香嵐渓に匹敵する歴史と景観の観音山|足助重伝建地区選定10周... 2022.02.20 コラム いくちゃんの子育て短歌〜春夏秋冬〜|第3回夏・どくだみの花 2023.03.15 コラム 人との密な関わりの中で生きていきたい【いなかとまちの交換日記... 2020.06.10 コラム 旭で活動し揺さぶられる僕の価値観|なぁなぁ!田舎ってこんなに... 2022.02.18 コラム いよいよお試し移住。サバイバルグッズは必須です!?【モヤモヤ... 2020.05.15 コラム 懐かしくて新しい豊かな暮らし【はだしで野生をとりもどせ!#3... 2020.11.24 コラム 園舎がないからできること【森のちいさなようちえんで育つ おお... 2021.06.18 コラム 都会志向のじゃじゃ馬娘が、豊田にたどり着いた【いいかげん移住... 2020.03.24 コメント ( 0 ) トラックバック ( 0 ) この記事へのコメントはありません。 この記事へのトラックバックはありません。 トラックバック URL 返信をキャンセルする。 名前 ( 必須 ) E-MAIL ( 必須 ) ※ 公開されません URL 上に表示された文字を入力してください。Δ
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