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いくちゃんの子育て短歌〜春夏秋冬〜|第1回 春・散歩道のおじぞうさん

コラム

短歌は、ふたりめの子が生まれて半年くらいのときに作り始めました。

なぜ作り始めたのか、あまり人に話したことがないのですが、正直に言うと、子育てうつになりかけていた自分を励ますためでした。ふたりめが生まれてから、かわいいはずの姿を味わう余裕も、子どもたちにあたたかい言葉をかける余裕もなく日々が過ぎていくことに、もやもやして、疲れ切っていました。

そんなある日。子どもをおんぶして味噌仕込みをしている最中でした。「私はここでの暮らしも子育ても、もっと楽しみたいんだ!」と無性に強く思い、なぜかふと短歌が浮かんだんです。それまでも、文章を書いたり本を読んだりすることは好きでしたが、短歌については未知の世界でした。それなのに「五・七・五・七・七」がとつぜんひらめいたんです。

絵を描くことが好きだったらイラストにしていたかもしれませんし、カメラが好きだったら写真にしていたかもしれません。たまたま言葉が浮かんで短歌になったという感じでした。思いついた勢いでfacebookに投稿したら、すごくいいねと言ってくださった方がひとりいらっしゃって、その方に知らせたくて次も作り…。

最初に短歌が浮かんだ日から9年たち、数えてみたら350首を超えていました。あの最初のひとことコメントがもしもなかったら、そこでやめていたかもしれません。その方には感謝だなあとあらためて思います。

旭には移住して12年になります。日常のできごとを短歌にしているので、こんな暮らしもあるんだな、こんな子育てもあるんだな、と何かのヒントになったらうれしいです。

末っ子が子ども園に入ったばかりの春に作った短歌です。

自分が園に行って母ちゃんがさみしくないか心配していたようです。いつもお散歩の途中で手を合わせる弘法さんに、ひそひそと話しかけていました。「心配されている…母ちゃんもがんばろ!」っていう気持ちになりました。

いつも散歩する道の途中にはお地蔵さんもあります。弘法さんやお地蔵さんに、子どもたちはよく花をかざったり、散歩で拾ったどんぐりを並べたりします。いつもやんちゃな次男が、立ち止まって静かに手を合わせているのを見て、「この子にはこんな面もあったのか」と驚いたこともありました。子どもが手を合わせる姿には、なんとも言えない静けさがあります。

お地蔵さんの前で、90を過ぎたご近所のばあばが、よく手を合わせていたのを覚えています。見えない何かに手を合わせる、大切な場所だったのかもしれません。

私が旭に来て新鮮に感じたことのひとつは、あちこちに、こういった古い暮らしの名残が今もあることです。周囲には山城跡もいくつかあり、子どもたちとお散歩に行きました。ご近所のお寺は江戸時代からあり、近くに縄文遺跡もあります。

昔の暮らしの様子、古い言い伝えなどをご近所の方から聞くこともあります。「ここは昔の通学路で、みんなでわらじを履いて通ったんよ、途中でわらじが切れてしまって、帰ってからおじいさんにいつも直してもらってね…」聞いていると、昔の人の姿が今の風景に重なって見えてきて、不思議な気持ちになります。

次の短歌は、こちら↓

戸田育代

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豊田市の山村地域に夫婦で移住して11年。4人の子育て中。子どもたちと、野山や田んぼの広がるご近所を散歩することが好き。子どもの頃に海外に住んだことがきっかけ...

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