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ポンコツ夫の無計画脱サラ移住日記|第3話「やさしさが巡る」自然農やってます

コラム

こんにちは、いとうゆうきです。

あっという間に、移住して半年が経とうとしています。

窓から見える景色はもうすっかり秋色で、気温も一気に低くなりました。
朝から聞こえてくる音は、先週までは草刈機の音だったのに、今週からは田んぼの稲を刈り取るコンバインの音へと変わりました。

我が家にはエアコンがなく、どうなることかと思いましたが、家の3分の1を占めている土間の涼しさを知りました。
窓を全開にし唯一持っていたサーキュレーターを回し換気をすれば、3日ほど寝苦しい夜があったくらいでなんとか夏を乗り切ることが出来ました。

さて第3話目の今回は、僕たちが実践している自然農について、また1年半前から学びに訪れている赤目自然農塾をご紹介したいと思います。

全く農業経験もなければお金もない僕たち夫婦でもいきなり農業を始めることが出来たので、田んぼや畑に興味はあるけれどハードル高そうで踏み込めないなぁ。。

と思っている方のハードルを下げられるように僕なりの自然農をお伝えできるようにがんばります!

ということで、今回は、ポンコツエピソードはありませんのでご容赦ください。

前回のポンコツエピソードをご覧になりたい方はこちら↓

 

なぜ自然農なのか

 

農業と一言で言っても、色々な農法があります。
現在もっとも普及している一般的な農法を慣行農法と呼ぶことが多いのですが、スーパーで一般的に販売されている野菜のほとんどは慣行農法で作られています。

色々な資材を使って効率的に作物が出来るよう考えられていて、同じ大きさで同じ品質の野菜が安定して収穫できます。

僕たちがいつも食べたいものを食べられているのは、慣行農法が発達したおかげだと思っています。

その他には有機農法、自然栽培、自然農法、バイオダイナミクス農法なんていうのもあります。農薬や化学肥料を使わなかったり、天体の動きに沿った栽培計画を立てるという要素を含めたり、様々な考え方に基づいた農法があり、面白いです。

さらに人によって我流の方法があったりして、数え切れないほどたくさんのやり方があると思っています。

移住前から、里山に住んだら家族が食べられる分の範囲で田んぼと畑をやりたい、そしてできるだけ安心安全なものを食べたい、と考えていた僕たちは「自然農」を学び始めました。

とてもシンプルな考え方でそろえる道具も少なく、人の手さえあれば未経験者でも簡単に始めることが出来、持続可能な農法であると感じたからです。

 

自然農との出会い

 

自然農には、

「耕さない、肥料・農薬を持ち込まない、草や虫を敵にしない」

この3原則をもとに、自然の生態系の中で作物を栽培するという考え方があります。

農業といえば、人が耕している姿をイメージしますが、耕さない田畑では土の中の生物が増え、動き回り、耕してくれます。植物の根が成長することで耕してくれることもあります。

人が耕さなくても自然がやりすぎない程度に耕してくれる。土は自ずと豊かになっていく、と自然農の提唱者 川口由一さんはおっしゃっています。

とはいえ、ほったらかしでは作物はうまく育たずに周りの草に負けてしまうので、自然を損なわない範囲で程よく手を貸してやります。

実は上の写真は田植えをしたあとの田んぼです。

自然農では自然界の大地と同じように「土を裸にしないこと」を大切にしているので、刈り取った草を被せます。

なので、こんな見た目になります。

僕が自然農と出会ったのは、「自然農」と大きく表紙に書かれた川口さんの本を手に取ったのがきっかけでした。

 

当時サラリーマンだった僕の仕事は、ビニールハウスやガラス温室でより効率的に作物を生産するための空調設備を提案し、販売することでした。

自然に左右されずに作物をつくるため、たくさんのエネルギーを使用して行う農業に違和感を感じていた僕には、この本の内容はとても衝撃的でしたが、どこか腑に落ちるような感覚もあり、魅力的に感じました。

もし興味がありましたら、是非この本を読んでみてください。

 

自然農の始め方

 

必要な道具は、鎌、くわ、ショベルのたった3つです。
どれも人の手さえあればすぐに使えます。

大型機械の燃料費やメンテナンス費用だったり、ホームセンターに、園芸土や肥料農薬を買いに行ったりする必要もありません。

鎌は、ノコギリ状になっている鉄製の鎌。

くわは、柄と刃の角度が60度の平ぐわ、鍛冶屋の職人さん手作りの鋳物でしっかりと重量があるものを選びました。

ショベルは、持ち手が木製で握りやすく、丈夫なものを下山地区の金物屋さんで購入しました。

どれも長く使えるよう、実際に手に取り、直接見て決めました。使うほどに手に馴染んで、愛着が湧いてきます。
あとは大地があれば、いつでも始められます。

まず最初にするのは「畝づくり」

ざっと説明すると、畑にする場所の草を刈り、ショベルで畝にする場所の周りを切り出します。
切り出した土は畝の上に盛り鍬でたたき細かくして馴染ませる。

表面を整えたら土を裸にしないよう刈り取った草を上に振りまきます。
最後に鍬の背でしっかり押さえて、完成です。

するとこのようになります!

自然農では最初に立てた畝を修理しながらずっと使い続けます。
他の農法と大きく違うところです。

敷いた草が時間をかけて土の養分になります。

 

赤目自然農塾について

 

僕たちが定期的に学びに行き始めて約1年半の赤目自然農塾について簡単に紹介します。

三重県と奈良県の県境、国道から脇道に入って5分程の山の中にきれいな棚田があります。
ここで、毎月第2週目の土曜日、日曜日に開催されているのが、赤目自然農業塾です。

初めて訪れたとき、こんな山の中の農地に人間がたくさんいる異様な光景にびっくりしました。

入塾の申込みや予約などは不要で、学びたい気持ちがある人は直接現地を訪れることができます。
入塾料や受講料は徴収されることはありません。学びに来た人の一人ひとりの事情や思いに任されていて、自由に寄付をするスタイルです。

スタッフの方々は、みんなもともとは塾生で、代表を含めて全員ボランティアです。

この運営方法で30年間も学びの場を開いていることも驚きです。
日曜日の午前中の実習が学びの中心となっていて、多い時で200人以上集まることもあります。

作業している人の姿を見て学び、わからないことがあれば都度質問に答えてもらうことができます。

午後は、借りている田畑で午前に学んだことを実践しながら身につけていくのですが、いざやってみるとさっき見たばかりなのに「あれ?」となることがどんどん出てきます。

そんなときに、スタッフさんが回ってきてくれるので、質問ができ、アドバイスがいただけます。

 

見る、聞く、だけでは終わらない場所

 

土曜日は来ている人たちとの共同作業を通してたくさんのことを学べます。
田畑で作物を育てるためには、田畑の周りを整えることも大切です。

田んぼの畦の補修や水を引くための水路づくり、獣よけのための柵づくりなど、その時に応じてやることは様々です。

なんと、赤目自然農塾にある石垣や橋、小屋は全て、共同作業で材料集めから作ったというのには驚きました。

写真は、台風で田んぼに水を引くための水路が壊れてしまったので、補修しているところです。

 

最近我が家の敷地内に大きな穴が空きました。
モグラと連日の豪雨で土が流れてしまったせいです。

こんなときに赤目の共同作業で学んだことが活きてきます。
慌てず騒がず、その場にあるもので対応できました。

共同作業を終えて温泉で汗を流したあと、山荘へ移動し、
自然農のお米や野菜を中心にした美味しい食事を頂くことができます。

みんなでテーブルを囲んで、楽しく会話しながらする食事はとても賑やかです。

毎回初めて話す人がいるので、とても良い刺激を受ける時間になっています。
食事のあとは、「言葉を通しての学び」の時間です。

その時々のテーマについて自分が考えていることを自由に発言したり、
他の人の考えを聞いたりすることができます。

普段しないような会話もあり、毎回新しい気づきや自分を見つめ直す時間として、
僕の月イチの楽しみになっています。

この前は「宇宙」というテーマで、そこから「暦(こよみ)」の話などに発展しました。
面白い内容ばかりでいつも気がつけば0時近くになっています。

 

赤目で出会った仲間たち

 

赤目には年齢や仕事、国籍も色々な人々が集まります。

体調を壊したことをきっかけに食への関心が高まり、ネットで調べてたどり着いた人、
YouTubeで知った人、僕のように本を読んで知った人、一般農家や有機農家の人、
定年退職して畑をこれから始めたい人、10代の学生さんもいます。

知多半島で自然農を実践している梅村さん夫婦は、赤目に通い始めて10年近く。

自然農で作ったお米や作物で食べるものをほぼ自給していて、近々販売も開始されます。

この田んぼは全て梅村さん夫婦の手植えです。

除草も全て手作業で、美しすぎて開いた口がふさがりませんでした。

 

僕と同じ時期に通い始めた福岡さんは、当時16年勤めたテレビディレクターをやめたばかりでした。
なんと現在、東郷に農園を開き、名古屋では「農家がつくる野菜スタンド YORISOI」というお店を夫婦で営んでいます。
スピード感がすごい。

農作業体験も開催しています!

https://www.instagram.com/yorisoi_yasaistand/

他にも塾を通じて、全国にたくさんの友達ができました。
お家にお邪魔させてもらったり、一緒にごはんやお酒をいただきながら田んぼや畑のこと、
趣味のことを話したりします。

 

僕たちの現在の田んぼ

 

入塾1年目、赤目で借りている20㎡ほどの小さな田んぼでは豊作で、
立派な稲がたくさん収穫できたと感動しました。

僕たちの家には約1000㎡の田んぼが付いてきたので、4月に移住してすぐに、田んぼの準備にとりかかりました。
田んぼも畑と同じように畝を立てます。

4m幅の畝を立てるのですが、この作業が大変なので、
友達を呼んで手伝ってもらいました。

畝が出来たら、その一部を使って苗床を作ります。
去年収穫したお米を全部食べるんじゃなくて少し取っておきます。

それが今年の種もみになるんです。

作った苗床に種もみを下ろすと芽が出て、1ヶ月も経つと田植えできるくらいに成長してくれます。

作業していると隣の田んぼのおじいさんがやってきて、

「そんな面倒なことやってるのか!子供のときにやってたから懐かしいわ!」
と言って笑っていました。

苗が大きくなったらいよいよ田植えです。
一般的な農法だと1箇所に3〜4本植えますが、自然農では1本ずつ手で植えます。

だから、田植え直後は「これで本当に大丈夫か?」と不安になりますが、
その1本が20本以上に分れてちゃんと実ってくれるんです。
達人級になると50本にもなることもあります。

 

こんなふうに手間をかけてやってきたお米づくりですが、
うちの田んぼは、なかなか残念なことになっちゃってます。

1本が3〜5本にしか増えなかったんです。

原因はいろいろとありますが、一番大きいのが、水の管理。
畦にたくさんのモグラ穴があり、塞いでも塞いでも水を張ることができませんでした。

米作りを甘く見ていました…
実習で成功していたのは、共同で水の管理をしてくれる人がいたから成功できていたんです。

地元の人たちはいつも温かく見守ってくれています。
そんなうちの田んぼを心配して、この前はお米を30kg持ってきてくれるおじいさんもいらっしゃいます。

 

みんなやさしい。けどちょっと恥ずかしい。

 

来年は心配かけないくらいに成功させようと思います。
とはいえ、そんな下手っぴでも穂をつけてくれた稲たちに感謝をしながら
収穫のときを楽しみに待っている、今日この頃です。

現在、自然豊かな下山地区で、何年も使われていなかった耕作放棄地を自然農園に変えていく活動をしています。
機械を使わず、人の手だけで行う自然農の農園づくりに興味がある人は、
ポンコツ夫こと伊藤まで気軽にご連絡いただけるとありがたいです。

インスタグラム→https://www.instagram.com/hiyomo.naturalfarm

一緒に自然農を楽しみましょう!!

無計画に移住してきた僕たちですが、
豊田市の中山間地で活動している人たちに助けてもらったり、
刺激を受けながらなんとか生活してきました。

次回は、そんな素敵な方々やその活動を紹介したいと思います。

続きはこちらから↓

いとうゆうき

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1989年生まれ、豊田市出身。農学部を卒業後、施設園芸機器メーカーに就職。近代的な効率を求める農業よりも自然に寄り添った農業で生きていきたいと思い、「自然農...

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  1. MITORIKOBAYASHI

    こんにちは。

    更新待っていました。

    凄いね、その赤目の農業塾が30年も続き、営利目的なし、運営はボランティア。

    やはり、人間は自然にかえるのですよね。

    土に触れ、お子さんの成長にもいいと思います。

    野菜スタンドYORISOIもチエックいたします。

  2. いとうゆうき

    コメントありがとうございます♪

    自然界の仕組みを意識しながらやると農業がさらに面白く感じます。

    素敵なお店なので、ぜひチェックしてみてください!

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