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自由が発揮できる私設文化的公共空間【「喫茶室転々」マスターが語る暮らしとつながる商いのカタチ第6回】

コラム

こんにちは、足助・冷田地区の古民家カフェ「喫茶室 転々」の小柳卓巳(こやなぎたくみ)です。平日はITエンジニア、休日は雇われマスターとしてコーヒーを淹れたりしています。

 

本コラムでは、毎回、転々のメニューをご紹介させていただいて、そこにまつわるエピソードや、どういう考えのもとでつくりあげたのかお伝えできればと思います。

今回が最終回となります。よろしくお付き合いください。

 

さて、今回紹介させていただくのは「私設文化的公共空間」です。

 
 
 
 
 
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何のことだかサッパリ分からないと思いますが、それもその筈、僕らが勝手に造った言葉なのです。

食べ物でもなければ、建物でもない。ある種の「概念」のようなものです。もうワケ分からん。

割と面倒な話になると思いますがご容赦ください。

 

これまでの転々の歩みを振り返ってみますと。

「こじらせ」からケーキやコーヒーをつくり始め。

「成り行き」で喫茶店を開いてみて。

せっかく始めたのに「無理せず、普通でいいや」とヌルい心構えで。

ただ「面白そう」と言うことでアレもコレも手を出して。

確固たる思いや目的があるわけじゃないので、結局、最終的に何がやりたいのか自分でも分からない始末です。

 

こんな調子でフラフラしていますが、ひとつ確かなこととして「自由だな」と強く思います。

誰に命令されるでもなく、無理して期待に応えるでもなく、そのときそのときの偶然やひらめきを大切にして、自分たちの「好き」を信じて日々自由をぶちまけている感じです。なので、転々を自分たちの「遊び場」のように捉えています。お客さんには、喫茶店を媒介にして僕らの遊びに付き合って頂いていると思っています。

 

例えば、新型コロナ対策として飛沫防止もできて、自然と小さな声になる、作るのも楽しくて、もしかしたら普段言えないことが言えちゃうかもしれない「糸電話ソリューション」。

 
 
 
 
 
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お客さんが作っているのを見ながらニヤニヤが止まりませんでした。と言うか、声かけて写真撮らせてもらっちゃいました。あー楽し。

 

例えば、本コラムで何度も登場している、古(いにしえ)のキャッシュレス決済「JaliPAY」(単なる「物々交換」とも言う)。

 
 
 
 
 
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砂利たっぷりの重たいバケツを持ってきて下さるお客さん。どこかで砂利をせっせとバケツに詰めて、ヨイショと車に載せ、重たいバケツを提げて喫茶店に向かう姿を想像して涙が出そうです。笑いで。しかも、その見返りがたったのコーヒー1杯だけとか。あーおかし(ゴメンナサイ)。

 

こんな「無駄」という言葉がこれ以上ないくらいシックリくるようなことに、わざわざ山奥まで来てくださったお客さんを巻き込む悪徳カフェ、、、じゃない、ハピネスカフェ「転々」でございます。

 

こんなことをしている内に、この自由をお客さんにも発揮してもらえたら良いな、この遊び場を共有できたら良いなと思うようになりました。喫茶室があって、本があって、広場があって、ベンチがあって、ブランコがあって、井戸があって、山がある。これらをお客さんが自分なりの使い方、過ごし方を自由に考えてもらえたら良いなと。

そしたら、僕らの発想だけじゃなく、いろいろなお客さんの発想も混じって、すごく素敵な場所になるんじゃないかなと。そうやって思いを馳せていると、自由に過ごす人たちがあちらこちらに共存している感じが「公園っぽいな」と思いました。ただ、それと同時に「公園」という言葉に対して違和感を覚えました。

 

どういうことかと言うと、昨今の公園は「自由」なフリしてやけに「決まりごと」多い気がしませんか。

  • 「ごみは持ち帰りましょう」
  • 「園内は禁煙です」
  • 「夜間は静かに利用してください」
  • 「野球、サッカー、テニスなどの球技禁止」
  • 「犬を連れての入場禁止」

ちょっと検索しただけで、いろいろな禁止看板が出てきました(笑)

 

本来、公園は何か明確な目的を持った人も特に用がなくぼーっとしたい人も選別されずに訪れてよい場所で、それぞれの人が思い思いに過ごして良いはずです。しかし、これらのルールによって訪れる人も過ごし方も決められて、ルールの中にストンと押し込められるような居心地の悪さがある気がします。みんなのために作られた場だから、みんなが不快な思いをしないように、みんなが我慢するような。「気遣い」のように自発的に出てくるものとは違って、「公共の場とはこうあるべきだよね」とご立派な社会観念がニコニコと睨みを利かせているから、利用者はそこからはみ出さないように飼い慣らされているような。

 

だけど、きっとほとんどの人は、こんな看板にあーだこーだ言われなくても他人を思いやることができるし、自分の出したごみを持ち帰るくらいの責任感もあるし、自分と他人との間にふわっとした壁を持ち合わせているから何かあっても上手くかわすこともできると思うんです。だからそれを信じて複数の他人の「自由」が混じりあっても案外みんな心地よく過ごせるんじゃないかなと思うんです。もしかすると、たまにぶつかり合って傷つく人が出てくるかもしれませんが、それは決して許されないことなんだろうかと思うんです。自分と相容れない人は必ずいます。それをルールで排除するのではなく、「社会ってそういうもんだよね」と、ピリついた自分も含め多様性のひとつとして認めても良いと思うんです。

 

だから、転々は「転々のトリセツ」のようなものはなるべく最小限にして、できるだけ余白を残したいと思っています。その余白をどう使うか使わないかはお客さん自身で考えて決めて欲しいなと思っています。

 

例えば、焚き火のメニューを敢えて整えず「場所とスウェディッシュトーチだけ」にしているのも、何を準備してどう過ごすかをお客さん自身に決めて欲しいからです。

 
 
 
 
 
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普通は(まあ、焚き火できる時点で普通じゃないのですが)お店側があれこれメニューを用意してくれて、お客さんはその決められた中から選ぶだけだと思いますが、転々では「焚き火」というイベントを自分で好きなように作ってよいわけです。

 

また、「書庫 山閒秋夜」という本棚をお貸しして個人でも本屋さんを開ける仕組みを提供しているのですが、どんな本をどんなふうに並べて本棚で何を表現するのか、お客さんに考えてもらうようにしています。

 
 
 
 
 
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30cm四方の本棚に置かれているのは単なる本なのですが、本を並べた人の価値観を感じられる唯一無二の空間になっています。

 
 
 
 
 
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過去のコラムでも書いたように、転々ではお客さんを「参加者」のように思っています。焚き火や「書庫 山閒秋夜」が正にそれです。「利用者」、「消費者」から一歩抜け出した感じです。喫茶室についても、単にコーヒーやデザートを食べるだけでなく、スケッチブックに何か描いたり、折り紙を折ったり、糸電話作ったりしても良いし、じっくり本を読んだり、何もせずぼーっとしたりしても良い。天気が良ければテイクアウトしてブランコに揺られながら過ごしても良い。

そんな本来の「自由」が発揮できる場をイメージして「私設文化的公共空間」と名付けてみました。言葉の響きは仰々しいですが、考え方はとってもユルいです。それでいて心地よく秩序が保たれている状態を期待して堅めの言葉を選んでみたというところです。みんなが周りの人をちょっとずつ思いやることで、訪れる人を選別しない「だれかの居場所」になれたら良いなと考えています。

 

「何もない」と言われて久しいこのド田舎ですが、見渡せば草木や小川、田んぼや畑、古い家や神社、そこで暮らす人々と文化で満たされていることに気が付きました。お客さんに気付かせてもらったものもたくさんあります。ここでの「普通」と街での「普通」は大きく違うと思います。だから混ぜてみたら何か素敵なことが起こるような気がして、これからも自由をぶちまけてみようと思います。「参加者」の皆さんと一緒に。

結果、何も起きないかもしれないけれど、別にそれでも良いです。

皆さんと一緒にそういう余白や偶然を楽しめる場所をつくっていければ良いなあ。

 

よろしくお付き合いください。

 

それではまた。

小柳卓巳

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1981年生まれ、やや瘦せ型のメガネの右利き。平凡な幼少期を経て平均的なITエンジニアをやりつつ、運とご縁に恵まれて妻とともに2019年に「喫茶室 転々」を...

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