モヤモヤ母を田舎に導いたご縁って?【いいかげん移住体験記#2】

コラム

いいかげん移住体験記では、2020年4月に豊田の田舎に移住する予定の大山眞記子さんが、そこに至るまでのこと、移住してみて、をタイムリーに綴っていきます。きっちりしすぎない”いい加減”と、ちょうどいい意味での”良い加減”な体験記、はじまります。カバーイラスト:konoirokonoiroillustration

前回のコラムはこちら↓

 

名古屋から豊田へ

 

名古屋から豊田に居住を移したのは今から11年前の2009年。夫の転職がきっかけでした。

当時私は似顔絵屋として活動をしていました。

週末を中心にマルシェなどのイベントを探して出店したり、ご依頼をいただいた場所へ出張したり、平日はショッピングモールで場所を借りて営業しました。  

その生活はとても楽しく充実していました。描かせてもらっている方の人生話をうかがう事も多く、絵と重ねながらの作画は深みがでて好きでした。

翌年、表現の幅をさらに広げたいと思い愛知県瀬戸市にあるデザインスクールに入学を決めます。WEBデザインを学ぼうと考えたのです。

パソコンには無頓着だった私、ここでようやく苦手意識を克服しデザインの楽しさを知りました。そしてさらにデザインとはなんぞや?と考えるようになり、卒業後は広告代理店に入社。

広告やパッケージのデザインを担当し、校正、印刷、イラスト製作、セミナー開催、資格取得まで、幅広く勉強させてもらいました。

新たな世界に苦戦の日々でしたが、この挑戦はとても有意義でしたし、当初の目的通り似顔絵にもWEBを取り入れ活用することが叶いました。

 

母になる

 

そんな暮らしも5年目の夏、念願の子どもを授かります。仕事も私生活も新たなステージに入り広がりを感じましたね。子どもの存在、影響って大きいです。

さらに2年後、第二子を授かり姉妹の母になることができました。

子どもとの生活はとても幸せで、今でも日々それを感じていますが、想像以上に大変なこともあるのが現実。

産後の新米ママには受け入れ難いことも多く、産前産後のギャップ、予期せぬトラブル、夜泣き、授乳、ホルモンのバランスなどなど数しれず…。

睡眠もままならないこの時期、今思えばゆっくり育児に専念すればよかったのですが、こんな時期だからこそ今後の不安についても考えてしまうんでしょうね…。

乳飲み子を抱えながら、どういう働き方をしようかと社会復帰に悪戦苦闘しモヤモヤしていました。

そして同じ頃、夫も仕事の中で、責任からの重圧にもがいていた時期でした。

家族には心配かけたくなかったんでしょうね、家で仕事の話はほとんどせず、やり場のないそんな心から時折体調を崩す事もあったほど。

私は私で心に余裕がなく、次第に会話も減り夫婦間の意思疎通もうまく図れなくなっていて、それにまた悩んで…と、まさに悪循環…辛い時期でした。

 

出会い

 

そんな時友人が、気晴らしのつもりで行こう!と声をかけてくれた講座「母チャレ」。

「母チャレ」は自身を知り、個々の掲げたチャレンジを仲間と共有しディスカッションするという母の集まりでした。

みんなパワフルでしたね、当時の私には眩しすぎるほどキラキラと前進するママ仲間との出会いでした。

そして夫も「大地の再生」という講座参加から、信念を共有できる仲間との出会いをみつけます。

それぞれステージは違えど、この仲間との出会いが初めの第一歩になったのは間違いないですね。本当に仲間って素晴らしい!

 

なりわい

 

お互い小さな光が見え始めた2019年1月、夫の独立開業準備を進めることに決めました。

必要な道具を揃え、チラシを配り、営業して仕事をとり始めた私たち。

二人で協力することで共通の話題が増えましたし、元気のなかった夫の活力が少しづつ戻り始めました。

嬉しかったですね、ようやく一つになれたと感じていました。

ですが現実はなかなか厳しく、仕事は思うように軌道に乗りませんでした。

今思えば儲けや稼ぎに考えが傾きすぎていたんだと思います。だけど当時はそれに気づけず、金勘定ばかりして落ち込んでいました。

そんな頃、母チャレ仲間のつながりで目にした「豊森なりわい塾」の案内。“なりわい”と言うからには、仕事の仕方を示唆してもらえるのではないかと期待し、思い切って夫婦で1年間受講することにしたのです。

 

豊森なりわい塾

 

2019年5月。そこに集まった第9期メンバーは地域も年齢も仕事も多種多様な27人。

毎月一回土日に集まり、塾長 澁澤寿一先生のレクチャーはじめ、グループワークやディスカッションを通して皆で意見交換し共有します。

真の豊かさとは。

自然とつながり循環すること。

地域を知り学び伝承すること。

森や農の現状。

暮らし・社会。

 

目から鱗でした。

わかるようでわかっていない「今」のことを、実際に歩いたり見たり聞いたりして心に感じることで自身に落とし込んでいったのです。

自身を知り、自分への問いも多く見つけました。

消化し理解するには多くの時間が必要でしたが、どんな課題もそこにいる仲間と共有することで、それはとても楽しいことのように感じ、進めて行くことができました。そして最終的には、“次世代に繋いでいきたいと思える世”を求め今、私には何ができるのだろう?という問いを心に持ち進むようになっていきました。

 

大地の再生

 

夫が信念を共有できる仲間を見つけた「大地の再生」も私たち一家に大きな影響を与えました。

この「大地の再生」は一種の造園法なのですが、それだけにとどまらない自然環境の在り方を伝承し実践する方法です。

風の流れ。水の流れ。地中の動き。通気。呼吸。

大地の環境だけでなく動植物の生物環境、気象環境、太陽・月など空間エネルギーを持つ宇宙環境にも広く目を向けたこの大地の再生は、小さな鉢植えやお庭(ミクロ)から大きな山や地球環境(マクロ)にも共通した自然の在り方です。哲学的にも捉えられますが、実際に自然の摂理に逆らわない方法で大地を整備実践されているのがこの「大地の再生」なんです。

2019年7月、私たち一家は京都府福知山市にある「風の家」と名付けられた古民家へ、大地の再生講座に参加するために泊まりにいきました。

講座なのに小さい子を連れて行っていいのかな…と内心心配していたのですが、そこには子連れの家族が何組もいて賑やかでした。

縁側で走る子。

スコップで土を掘る子。

絵を描いたり、寝そべったり。

家のまえの溝ではバケツを持って何やら採っている男の子たち。

「何が採れるの?」と近寄ると、ニヤッと手に持った大きなイモリを見せてくれ「キャー」と大笑い!

横でトンボのつがいを興味深そうに見ていた男の子は、

「僕は交尾が見たいんだ」とまっすぐな眼差しで教えてくれました。

娘たちは、大地の再生作業の手伝い(草刈り)を楽しそうにすすんでやりはじめました。

疲れたらごろんと休み、お腹が空いたら食べたいものを切って準備。

歌ったり踊ったりしながらバーベキューで焼けるお肉を「まだかまだか」と大人に交じって見つめていて。

その眼差しは私が初めて見る娘の一人前の表情でした。

実はこの日は上の娘の4歳の誕生日で、私は何か特別なことをしてあげたいという気持ちがありました。普段見れないお父さんの働く姿も見せてあげられる!と。

しかしここは自然のまま、感じるままに動きつながる大人と子どもで溢れていて、私が準備した“娘へ贈る小さな体験フィールド”ではなく、自分自身が自然の一部であるということを身をもって感じ取ることができる場であり環境でした。

気付かされました、自身の驕りに。

自分は自分の感じるままでいいということを深く感じましたし、親としてハッとさせられたんです。

ここでの2日間を経験し私は考えました。

自然が素晴らしいものでありながら最も自然だということを、日常的に家族みんなで感じる術はないかなぁと。

大山眞記子

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京都府亀岡市出身。2020年春、稲武の築100年古民家へ家族で移住した2児の母。自然豊かなこの場所で地域と繋がりながら「農を楽しみ、恵みをいただき、休む」そ...

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