• HOME
  • 記事
  • レポート
  • 知りたい!世界の田舎事情vol.1【中国】都市化でピンチの小規模校を存続させたい。

知りたい!世界の田舎事情vol.1【中国】都市化でピンチの小規模校を存続させたい。

レポート

とよたでつながるローカルメディア縁側の編集長きうらゆかは、豊田市でいなかとまちをつなぐ中間支援組織「おいでん・さんそんセンター」で2014年から勤務しています。

つなぐことで新たな課題解決法を探る取組は、日本各地だけでなく、海外からも注目を集めてきました。これまで韓国のメディアから取材されたり、名古屋大学の国際開発研究科留学生の研究対象となったり、フランスタイ、マレーシア、台湾などから視察を受け入れたりしてきました。

どうやら皆さん、ご自身の国で直面している、もしくはこれから迎えようとしている高齢化・人口減少に伴う課題の解決の糸口を探していらっしゃるようです。こちらの状況を見て「ふむふむ」と帰って行かれますが、

「ちょっと待って!」

どうせなら、こちらも勉強させてもらえませんか・・・・。

共通の課題を抱える各国の皆さんのこと、同じ地球上に住む仲間として、知りたい!

おいでん・さんそんセンターを訪れた他国の皆さん、豊田市に関わりのある皆さんに、ご自身の国の田舎事情について、お話を伺うことにしました。


 

第1回目は、中国。2020年2月6日から9日にかけて「日本における小規模学校に関する研究」のため、視察に来られた3名、黄勝利(こうしょうり)さん/中国21世紀教育研究院執行院長、劉靖(りゅうじん)さん/東北大学大学院教育研究科准教授、鄧琪(とうき)さん/東北大学大学院学生にインタビューしました。

(左)劉靖さん/東北大学大学院教育研究科准教授(中)黄勝利さん/中国21世紀教育研究院執行院長(右)鄧琪さん/東北大学大学院学生

きうら 今回、おいでん・さんそんセンター(以下、センター)を通じた視察を計画したのはなぜですか?

劉さん 私は以前、名古屋大学で助教授をしていました。在籍中、国際開発研究科の学生が行った研修で、センターを通じて豊田市の山村地域に2年間お世話になりました。

それがきっかけで、旭地区を知るようになりました。当時、名古屋市内に住んでいたのですが、「ここに暮らしてみたい」と思うほど魅力を感じるようになりました。東京の大学に異動したので叶いませんでしたが、移住しようと思っていたほどです。

今回、山村地域の教育について中国21世紀教育研究院の黄先生が調査したいということで、センターにお願いして豊田市の山村地域の現場の状況について学ばせてもらうことになりました。

きうら 旭地区に移住したいと思った、その具体的な理由は何でしょうか?

劉さん 私は2003年9月に来日し、16年が経ちます。もともと北京生まれです。万が一食料、電気、水が無くなった場合、生きられるかどうか日頃から危機感を感じていました。

都市部に生まれ育った人間で、農が身近にありませんでした。食料を作ることができる能力がない人生。人間としてどこか足りない部分があります。ベランダにトマトなど植物を育てようとしましたが、失敗したことがあって、そういう能力を身に付けるのが大事だと思いました。そこから田舎で生活することが重要だと感じるようになりました。

きうら 最近、SNSで李子柒さんという中国人の女性が田舎で自給自足生活をするYoutubeが話題になっているのを見ましたが、中国では田舎志向が高まっているのですか?

【参考 youtube 李子柒 Liziqiチャンネルより】

 

劉さん とてもわずかです。14億人の人口の中ではごく一部。地域的にも限られています。大都市の郊外のあたりには、そういう現象があります。すでに豊かになった人たちが、自分たちのライフスタイルをもう一度考え直す。そういう人たちが郊外で農業をやったりして発信しています。

本当の田舎にいる人たちは、生きるためのことをしなきゃいけない。そこまでの余裕はありません。

きうら 鄧さんはどう思われますか?

鄧さん 憧れはあります。私は今、大学院生なので仕事をしていません。この方の動画にあるような、せかせかしなくてのびのびできる生活がいいなと思います。一方で、お金を稼がないと生活が成り立たないので、そこにすごく葛藤があります。

きうら 中国の山村地域の状況について教えてください

黄さん 日本と比べて中国の経済的な発展は、30~40年遅れているという段階です。都市化が進んでいます。農村の発展より政府は都市化を重視しています。都市化のプロセスのなかで、農村から都市への出稼ぎの人たちが増えています。

農村から若い人たちが出て行って、残される子ども、一緒に都市へ連れていかれる子どもたちが増えているので、小学校が小規模になりつつあるのが現状です。多くの学校の小規模化が進んでいて、中国全体の小中学校のうち、生徒数が100人を下回る小規模校の数は、44.4%を占める約11万校に上っています。

これが大きな社会問題になっています。学校は、農村地域の単位のひとつの拠点であり、その地域のひとつの核心です。学校がなくなると若者はますます出稼ぎのために出て行ってしまうので、残されるのは、お年寄りや子どもだけになる。学校がなくなるうえに、労働力が出て行ってしまうことで、農村自体がなくなるんじゃないかという懸念がすごく大きい。

この課題に対して、政府や私が勤めている中国21世紀教育研究院は、子どもたちが農村に残ることができるように様々な対策をしています。今回来日したのは、若者たちを地域の外から農村に根付かせている日本の実例を学び、中国で活かすことができるかを考えるきっかけにするためです。

 

きうら 小規模校の増加に対して、現在取られている対策はどのようなものですか?

黄さん 2つの側面から対策を行っています。ひとつは、ハード面の充実化です。学校の設備に関して、コンピュータ室や実験ができるような教室などをたくさん設けるようにしています。もうひとつはソフト面です。先生たちの給料を上げたり、都市から農村に来る先生、農村にすでにいる先生に補助金を出したりしています。若い先生たちが、農村の学校に長くいられるようなアピールをしています。

先生たちに、どうやって質の高い教育をできるようになってもらうかは課題です。中国21世紀教育研究院では、先生のスキルアップや働きやすさ向上のサポートをしています。

きうら 日本での取組を見て、思ったようなヒントが得られましたか?

黄さん 今回の視察では、センター、旭地区の小中学校、つくラッセル、移住者の方たち、旭木の駅プロジェクト、あさひガキ大将養成講座について話を聞いたり、現場を見たりしました。豊田に来る前、北海道の釧路にも行ってきました。

印象に残ったことが2点あります。釧路や旭地区の小規模学校は、教育水準が高いということ。そして、旭地区の小規模学校は、地域、保護者、学校の三角連携がすごく馴染んでいて、関わりが強いということです。

旭地区では、いろいろな能力がある若者が都市部から農村地域にきて、地域の人たちと共に生きて、共に耕して、共に分かち合う社会ができていることに感心しましたし、理想的な社会だと感じました。

豊田市の山村地域での取組は、持続可能な発展、持続可能な社会を目指している社会の一つの先端的なサンプル、事例として参考になるのではないかと考えています。


[取材を終えて]

「小規模校は地域の核心です」という黄さんの言葉が印象的でした。都市化が進み、人がどんどん田舎から出ていってしまう現状の中、さまざまな対策で小規模校、そして学校がある地域が消滅するのを防ぐ試みがあることに驚きました。

学校がなくなってしまうことへの危機意識は、国が違えど同じ。これからも互いの取組を共有することで、地球規模でより良い未来をめざしていけるのではないでしょうか。

きうらゆか

2,450 views

1979年生まれ。とよたとつながるローカルメディア縁側編集長。おいでん・さんそんセンターコーディネートスタッフ。2014年、名古屋市から豊田市旭地区に拠点を...

プロフィール

ピックアップ記事

  • コメント ( 0 )

  • トラックバックは利用できません。

  1. この記事へのコメントはありません。