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ここに決めた!運命の物件に出会うまでの空き家巡り【いいかげん移住体験記#3】

コラム

いいかげん移住体験記では、2020年4月に豊田の田舎に移住した大山眞記子さんが、そこに至るまでのこと、移住してみて、をタイムリーに綴っていきます。きっちりしすぎない”いい加減”と、ちょうどいい意味での”良い加減”な体験記、はじまります。カバーイラスト:konoirokonoiroillustration

前回のコラムはこちら↓

 

ふるさとって?

 

2019年7月、前回でお話しした「風の家」での体験を境に、私は家族の日常について深く考えるようになりました。

 

もっと日常を共有できる暮らし方ってないだろうか…。
そう考えた時、私は豊森なりわい塾のワークで訪れた豊田市連谷町の風景をふと思い出していました。山に囲まれた川沿いのそこは、段々と田畑が広がり、せせらぎと深緑の揺れが心地よく、鳥の声が響き、白い蝶が楽しげに飛び交う場所。

 

全部で20世帯ほどでしょうか。その小さな集落の中には、縁側に腰掛けるお年寄りのポカポカと優しい眼差しがあり、坂道を下り笑う子ども達の声が響き、引き寄せられるように大人が集まり井戸端も弾んでいる様子がありました。

「おーい。自転車上手くなったなー!」

子ども達のスピードに合わせて進む軽トラのおじさんのしわくちゃな笑顔も印象的で。

…「ただいま。」

気がつくと私は、ここに住む子どもの気持ちになっていました。

私は今、この風景を肌で感じていて、いつか懐かしく思う時がくるでしょう。
そして優しい眼差しを自分の子どもやその友達、親やご近所にも向けることができるでしょう。
自分の育った場所を大切に思う心が育つでしょう。

 

ここは帰ってきたくなる場所。

 

これこそが心の故郷なのかもしれないと感じたのです。

 

 

 

 

情報収集からスタート

 

私は心の故郷探しのために動き出しました。

 

最初にドアを叩いたのは、豊田市の都市と山村をつなぐプラットホーム的存在「おいでん・さんそんセンター」です。

自分にとってどんな暮らしがベストなんだろう…。

 

「移住」と一言に言ってもその方法は生活スタイルによって様々で、田畑だけ田舎に借りる方法や、週末だけ田舎で過ごす方法、オフィスを田舎に構える、子どもを田舎の学校に通わせる…などいろいろ。

私もまだ模索段階でしたが、おいでん・さんそんセンターの移住担当の方から知り得た山村での暮らし情報(空き家、見学会、地域柄、手続きや補助金、近隣のお店など)を踏まえて、実際に自分の目で見てみることから始めようと考えました。

 

 

どれも良さのあるそれぞれの空き家

 

空き家見学1件目、小原地区の物件へ。

水田広がる眺めのきれいな高台で家の前に車2台ほどの駐車スペースと家庭菜園できる小さな畑があります。脇には大きな柿の木があって、その奥につづく坂を登ると昔ながらの蔵と鳥小屋。ニワトリも飼ってみたいねと以前夫と話していたことから、この鳥小屋は少し修繕すれば使えそうだと嬉しく感じました。

玄関は横開き木枠のガラス戸で、上には雰囲気の良い平傘の電球がひとつ。

中に入ると土間の奥に比較的新しいシステムキッチン、右には小さな子ども部屋。

左には居間、客間が合わせて4部屋。縁側もあります。

つくりはとても素敵です。

家の右奥には背の高さくらいある大きな洞穴があり驚きました。ここは昔、米や穀物を備蓄したり農具などを置いておく貯蔵庫だったそうです。

水道無し。トイレ無し。

修繕にはかなり手がかかりそうだけれど、一から作る楽しさは味わえそうだなーと創作意欲を掻き立てられる物件でした。

 

 

 

空き家見学2件目、こちらも小原地区の物件。

細い坂道のエントランスを抜けると煙突のある小さな平屋。ここはつい数ヶ月前まで山仕事をしていたおじいさんが一人で住んでいた場所だそうで、中には暮らしの民具が所狭しと置かれていました。薪ストーブもあり、次の冬のために準備したと思われる薪も残されていて、なんだかおじいさんがまだ住んでいるような気配すら感じます。

古民家に住むということは先人の想いも受け継ぐということで、その覚悟を持つことも必要なのかもしれない…と教えられた物件でした。

 

 

 

空き家見学3件目、こちらも小原地区です。

道路脇広めの駐車スペースに車を停め、奥につづく砂利道を進むと青瓦屋根の大きな家。隣接した田んぼスペースがあり、その周りを取り囲む竹林。玄関前に広さがあるので、畑のスペースも確保できそうです。

地区長さんも来てくださり、お役の話や家賃相場なども教えてくださいました。

いい感じです。条件も悪くない。取り巻く環境は申し分のない素敵な物件でした。

そして帰り際、小原地区に移住し1年目のご家族さんのお宅を見学させていただきました。旦那様がリフォームされたという古民家は、古き良きつくりを残しつつ、シンプルに機能性を取り入れてあり、そのゆったりとあたたかな空間はとてもお洒落。それに、小さなお子様がみえる同世代のご家族とあって、その存在はこれから移住をするかもしれない私たちにとって心強く嬉しいものだなと改めて感じました。

 

「小原いいね!ありだね!」

帰りはもっぱら小原の話題!

あそこで生活したら何を作って何をやって…と具体的な想像も大きく膨らみました。

 

 

 

空き家見学4件目、下山地区。

眺めがよい場所に位置し、広さもあって、好条件かと思いましたが、実際はかなり老朽化が進み修繕に多くの費用がかかりそうだと感じました。やはり実際に聞いてみる、見てみるって大事ですね。

 

 

空き家見学5件目、旭地区。

山に向かって伸びる道はクネクネと曲がっていて どんどん、どんどん細くなり、途中からは舗装も無く凹んだ土路に車体が大きく揺さぶられます。軽自動車で幅いっぱいの道は、片方が崖の絶壁ゾーンもあって、かなり慎重に進みました。

こんなところにどんな家があるのだろうか??

不安に駆られながらもしばらく進むと、突然木々の間にぱぁーっと視界が開け、木漏れ日が眩しく差し込む場所。右手に小さな小屋が二つあり、奥には畑だったであろう広場、井戸、そして立派な母屋が連なっていました。

雨が上がってすぐだったこともあり、そこはキラキラと幻想的な場所に感じました。

「ここがいいーー!」と、はしゃぐ娘ら。玄関を開けると広い土間があって、奥にシステムキッチン。お風呂も小さめだけどまだまだ使えそうです。部屋は和室が4つ。2階は仕切りがなく大きなワンフロアになっていて、改装もしやすそう!

一本道で森の奥深くですが、切り開けばすぐ裏手に旭高原元気村が位置する場所で、将来的に何か連携できるかもしれない!…なんて想像も膨らみます。

 

「いいねー!いいよねー!」

 

私たち家族の求めていたものはこういうとこなんだなぁとここを見て感じました。

未来があり、可能性がある。そんな場所。

 

 

空き家見学6件目、稲武地区。

細い路地裏、高めの石垣の奥に黒屋根のとてもきれいな平屋。縁側の前は庭になっていて、家庭菜園も少し出来そうです。玄関を入ると、まず驚いたのは柱も廊下もツヤツヤで空き家とは思えないきれいさ。床も畳もまだまだ使えます。

キッチンも小さめですが良好。お風呂もトイレも申し分ない。家の横には浅い小川があって、小川に沿った通路は裏山へと続いていました。

子どもが遊ぶには良さそうです。

田畑はありませんでしたが、交渉次第で貸してもらえそうな土地は道を挟んだ向かい側にたくさんありました。

そして何より、車で5分も走れば稲武の中心地。

生活の利便性を優先して考えるならとても魅力的な立地でした。

 

 

空き家見学7件目、稲武地区。

川沿いの国道は初夏の新緑で清々しく、その日も雨上がりを楽しむバイクの列が続いていました。

中心地より標高が100メートル以上も高く、7月だというのに少し肌寒いほど。山道は思っていたよりきれいに舗装されていて、車のすれ違いも問題なくできる広さがあります。

峠を登り、空が近く広くなり、視界が明るく開けたその先、

 

………。

 

そこは、山、田畑、家、道、

ただ、それだけ。

点在する家々を抜け細道を進むと丘に続く脇道があって、その先に赤屋根のトタン小屋に並んだ瓦屋根の木造家屋が見えてきました。

丘の向こうは段々と田んぼが連なり、水の流れる音もかすかに聞こえます。家の周りはたくさんの紫陽花で彩られ、キウイの棚、柿、栗、梅…と、立派な木々が並びます。

 

見渡す限りの大自然!

こんなところあったんだ!

 

これまで見てきた空き家とは格段に違う何かがそこにはありました。

夫もそう感じていたようで、「ここにしよう!」と家の中を見る前に言い出すほど。

土地に恋するってこういう感覚なのかなと思います。

私もこの時、“自然と共存するってこういうことなのかもしれないな”と、直感的に感じていました。

大山眞記子

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京都府亀岡市出身。2020年春、稲武の築100年古民家へ家族で移住した2児の母。自然豊かなこの場所で地域と繋がりながら「農を楽しみ、恵みをいただき、休む」そ...

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