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足助病院・早川さんに聞いた【コロナ、みんなの現時点】「感染こわくて行かない」病院が抱える課題

インタビュー

愛知県に緊急事態宣言が出たのが4月10日。豊田市での感染者数は、8月18日現在で160人を超えている。コロナウィルスに影響を受けた状況・受け止め方は刻一刻と変わっていくに違いない。だからこそ時間的流れのなかでの今、【現時点】を記録しておきたい。豊田市で暮らし、働く皆さんにお話しを伺いました。

早川富博(はやかわ・とみひろ)JA愛知厚生連足助病院名誉院長、(一社)三河の山里課題解決ファーム代表理事、社会福祉法人東加茂福祉会理事長。足助病院に23年間勤務。「地域医療はまちづくり」をスローガンに豊田市中山間地域の保健・医療・福祉・介護事業に尽力。2019年より(株)三河の山里コミュニティパワーで地域サービスと電力を組み合わせた事業を推進し、地域住民主体の持続可能な地域づくりを目指している。三河の山里コミュニティパワーホームページ https://my-power.jp/

 

ーまず、お仕事について教えていただけますか。

足助病院は、愛知県厚生農業協同組合連合会(愛知厚生連)に所属し、豊田市足助地区にあります。
私は1998年から2019年まで院長を務め、その後は名誉院長をしています。名誉院長とは言っても普段は、一人の医者として診察などにあたっています。

現在はそれに加えて、令和元年6月に設立した株式会社三河の山里コミュニティパワーの代表取締役もやっています。この会社は、山村地域の課題解決と地域循環を進めるため、「たすけあいプロジェクト」という高齢者の交通シス テムの構築や、電力事業などに取り組んでいます。

 

医療機関にどうかかるのが
ベストなんだろう

 

―コロナで受けた影響にはどのようなことがありますか?

「病院に行くと感染するかも」、「なるべく入院したくない」という心理から みなさんが外来受診を控えたり、入院を避けたりということで、足助病院では 3月から5月にかけて患者数が大幅に減りました。

 

じゃあ、今までの患者さんって不要不急だったの?ということになりますよね。 受診するかしないかの判断基準って人によって全然違う。ちょっと体調が悪い くらいで何度も受診する方がいれば、長期間放置する方もいます。「医療機関の掛かり方って、何が一番良いのか」ということは、これを機に真面目に考える必要があるのかもしれません。

 

 

感染対策は10年前から

 

感染対策についての実情はどうなのかと言うと、足助病院には10年前から感染対策委員会が常時置かれています。感染対策専門の専任看護師、薬剤師がそれぞれ1名いて、その2名をトップとしてチームが組まれています。

 

具体的に言えば、発熱している方は隔離した場所で診る。これはコロナに限らずインフルエンザの場合などと同様です。保健所からの依頼であってコロナ陽性の疑いがある方を検査する場合、決められた医師、看護師、事務員が対応する。対応する医師が日替わりになっていたら、だれが感染するかわからないでしょ。だからもちろん防護服など完全な対策をして、接触する人を限定しています。

 

加えて、病院はこの20年くらいの間にすごく機能強化されています。患者さんを診たら手洗いして、昔はタオルで拭いていたけれど今は全てペーパータオル。 看護師さんがおむつ交換をするとしたら、ひとり終える度に手袋とエプロンを新しいものに替えます。

 

患者さんが感染症を持っているかもしれない、という前提の下で、次の方にうつさないために全部替えるのです。そういうことを標準的な予防策として行っています。全部使い捨てなので当然ゴミが山のように出るわけですが、感染対策としてはこういった面でも徹底されていると言えます。

 

対策は常にやっているのですが、病院にかかることでコロナ感染のリスクが高まるという皆さんの怖れや思い込みで、患者が減り、経営的に厳しくなってい るのが現状です。巷では、経済的な医療崩壊という言葉も出ていますね。

 

コロナが浮き彫りにした
医療制度の課題

 

なぜ患者さんが減ると厳しくなるのか、大きな話になりますがちょっと聞いてください。みなさんが病院にかかると支払いをしますよね。ご存知のとおり、 それに加えて国保や協会けんぽのような保険者が医療費の残りを支払っています。保険者が負担する医療費の一部は税金から支出されています。

医療機関は、患者さんへの医療行為に対して保険制度から支払われる診療報酬を元に経営を行っていて、その値段は公定価格として全国一律に定められてい ます。
近年、日本の総医療費が増加傾向にあるので、それをできるだけ抑えるために 国が対策を取っています。たとえば病床が600ある病院だったら、そこに患者さんが9割以上入っていれば黒字になるように医療行為の点数が細かく決められているわけです。

 

だからコロナで患者さんが少なくなって、9割が8割になると、医療機関の運営がすぐ困難な状況になります。経営が成り立たなくなって、ある大学病院ではボーナスカットというような人件費を削らざるを得ないことになってしまうわけです。コロナが根本的な医療制度の課題を浮き彫りにしたと言えますね。

 

 

お年寄りのステイホームで
出てきた弊害

 

ー他に課題に感じていることはありますか?

 

足助病院は長年、予防事業に力を入れています。たとえば院内で「脳いきいき 倶楽部」、「ロコモ予防教室」、「名誉院長サロン」などを月に4,5回、地域のお年寄り向けにやっています。認知症や急性期の病気にならないため、飲んでいる薬を減らすため、運動や食事の仕方などをレクチャーします。病院経営にとっては患者さんを減らすことはマイナスにつながるけれど、地域のためになる重要な活動です。

 

それがコロナのため集まってはいけないということで、中止する教室が出てきました。うちの病院だけでなくて、自治区での集まりなども軒並み中止になっています。もうそれが半年くらい続いているので、お年寄りが出掛けられなく なって疲弊してきている。運動ができなくなっていることだけではなくて、お出かけして誰かとおしゃべりするという大事なことができない。鬱々としてし まってきています。その証拠に、3~6月に低迷してきた入院患者数が増えています。それが一番困ったことです。

 

どんな感染症でもそうですが、予防すればするだけ防ぐことができる。日々の生活のなかではちゃんと手洗いなどをしっかりしていれば、恐れすぎることは ないと思いますよ。今後、ワクチンが開発されれば、世の中のマスコミが少しずつ沈静化して、騒ぎが収まっていくのではないかと予測しています。集まれない、ということも少しずつ改善されていくんじゃないかな。

 

きうらゆか

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1979年生まれ。とよたとつながるローカルメディア縁側編集長。おいでん・さんそんセンターコーディネートスタッフ。2014年、名古屋市から豊田市旭地区に拠点を...

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