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旭地区でハラペーニョを名産品に!90代でも畑仕事を続ける元気を関係人口とつくるプロジェクト

インタビュー

[sponsored by (一社)モビリティ・ビレッジ]

色も形も細長いピーマンにそっくり。かじってみると、爽やかな辛さがじんわりと口のなかに広がる。このメキシコ原産のハラペーニョを、人口減少と高齢化が進む中山間地域・豊田市旭地区の新たな特産品にしようというあさひ&とよたハラペーニョプロジェクト(以下、ハラペーニョプロジェクト)』2022年から始まっています。


とれたて(緑)と熟した(赤)ハラペーニョ

タッグを組んだのは、県内で飲食店を運営する株式会社ワイズ(以下、ワイズ)、中山間地域での自立した移動に貢献する一般社団法人モビリティ・ビレッジ(以下、モビリティ・ビレッジ)、旭地区で畑を続ける住民でつくった正晴会3者です。


左から(株)ワイズ今村さん、正晴会鈴木さん、(一社)モビリティ・ビレッジ杉本さん、江崎さん

 

このハラペーニョプロジェクト、ハラペーニョを名産品にしたいのは表向きの目的。真の目的は「高齢者の生きがいづくり」だそう。

なぜ、地域住民と、それまでは旭に縁がなかった企業と団体が協力して、ハラペーニョを名産品にしようとしているのか。それがどのように高齢者の生きがいにつながっているのか。関係人口に興味がある方、これからの中山間地域が元気であり続けるにはどうしたらいいか考えたい方、ぜひ読んでみてください。

 

 

採れすぎた野菜、捨てずに街へおすそわけ

 

ハラペーニョプロジェクトの前に始まっていたのは、『旭元気野菜プロジェクト』でした。

旭地区の野菜を街に運搬してスーパーなどで販売してもらう取り組みで、2017年4月にスタートしました。野菜は、販売農家ではないけれど畑を長年続けている旭地区の高齢者が育てたもの。出荷を取りまとめているのは、太田町に住む正晴会代表・鈴木正晴さん(下写真)です。

集荷と運搬を担っているのは、江崎研司さん(下写真・中央)が代表を務めるモビリティ・ビレッジです。

鈴木さん「当時、旭地区の社会福祉協議会で、高齢者の生きがいづくりについて話し合っていました。旭の高齢者は、野菜づくりにやりがいを感じている人が多い。でも時々、野菜がたくさんとれすぎて捨てなければならないことがあり、やる気がそがれてしまいます。余った野菜を街に持っていって販売してはどうかというアイデアが浮かびましたが、運ぶ人がいないので行き詰まっていました」

20171月、社会福祉協議会旭支所で、地域福祉計画『農業による生きがいづくり』についての情報交換会が開かれました。そこに現れたのが、モビリティ・ビレッジの江崎さんでした。

モビリティ・ビレッジは、誰もが安心で自立した移動ができる元気な町づくりのために活動する非営利型の団体。江崎さんが自動車会社を定年後、同年代の仲間と一緒に立ち上げました。

江崎さん「田舎と街のコーディネートをしている豊田市おいでん・さんそんセンターから、旭元気野菜プロジェクトで野菜を運搬してみませんかと相談がありました。本来は人の移動のサポートを目的としていましたが、野菜を運ぶことが住民の元気につながるならと参加することにしました」

2017年当時の社会福祉協議会旭支所の担当者(後列両端)

 

”売り上げ”よりも”生きがい”が大事

 

毎週土曜日、朝8時を過ぎた頃、住民が季節の野菜を持って出荷場所に集まります。モビリティ・ビレッジのボランティアスタッフ2名が、旭地区の3か所を順に回って野菜を集め、車で40分ほどの場所にあるスーパーやまのぶ四郷店と、野菜の配達を希望するカフェなどに運搬しています。

鈴木さん「スーパーやまのぶさんは、野菜の規格がそこまで厳しくないので気負わずに出荷できてありがたいです」

納品する野菜の種類や個数についての伝票処理も、モビリティ・ビレッジが担当しています。売上金は、出荷者に元気維持金として分配され、残りが運営費に充てられます。運営費から、運搬のために必要な車両費、燃料費、ボランティアへの謝金などが支払われます。

活動当初の2017年、運営費は赤字の状況でした。翌年は、スーパー店頭での直売イベントや、野菜の小分けと包装をすることで売上が伸びましたが、変わらず赤字。赤字のままでは活動自体が維持できない。それでも、売上拡大を目指して突き進むのは違うという想いが江崎さんにはありました。


スーパーで山菜を直売した時のようす

江崎さん「売上をどんどん増やそうとすれば、出荷してもらう住民の方たちに、野菜の規格や数量に関して『こうしてください』というお願いごとが増える。無理をさせる時点で、『農による生きがいづくり』ではなくなります。それに、運搬するボランティアもお金のためではなくて、旭地区の人たちとの交流が生きがいにつながっている。大量生産して事業化するのではなく、人と人がお互いに支え合うことで持続可能にしていきたい」

支え合いを生み出し、同時に経費を賄うための方法を考えていた江崎さん。以前、同じ会社で働いていた杉本剛さん(上写真・右端)が定年退職し、家庭菜園を始めた姿を見て「街でも野菜づくりを生きがいにしている人たちがいる」と気づきました。杉本さんと相談し、家庭菜園と地域貢献に関心を持つ街の定年世代を募って『とよた愛菜農園』というチームを作りました。

とよた愛菜農園のメンバーになると、旭の出荷者たちと野菜の育て方について情報交換を行うことができます。また、家庭菜園でできた野菜や加工品を、とよた愛菜農園ブランドとしてイベントなどで販売。その売上金の一部を、農を生きがいにする田舎の仲間を応援する気持ちで、旭元気野菜プロジェクトに協賛金として渡しています。この協賛金が上乗せされたことで、運営費がなんとか賄える状態になりました。


まちなかのマルシェに出展する愛菜農園のメンバー

 

農の課題解決を志す企業との出会い

 

ちょうど同じ頃、ワイズが農業で旭地区を応援したいと動きはじめていました。長年飲食店をフランチャイズ展開しているワイズは、食材がどのようにできているかを知るための社員研修、そして地域貢献のために、2016年から旭地区の遊休農地で米や野菜づくりを行なってきました。2020年からは古民家を借りて研修の拠点にしています。

ワイズ社員今村元洋さん(下写真・左)「旭地区に関わり続けることで見えてきたのが、イノシシやシカなどの獣害高齢になることで田畑が続けられないという課題でした。お世話になっている旭地区のため、課題を減らせるような作物を探していたところ、ハラペーニョに出会いました」

ハラペーニョは寒暖差を好むため、旭地区の気候にあっている。また、獣害が少なく、高齢者でも栽培がしやすいことがわかりました。また昨今の激辛ブームや、国内在住の外国人の需要も見込める。

今村さん「旭地区の方たちにハラペーニョを栽培してもらえば、野菜づくりをやめずに済むのではないか。また、ハラペーニョを加工して商品化できれば、買い取ることでお役に立てるし、自社の事業にもなると考えました」

 

はじめての商品ハラペーニョ味噌が誕生

 

ワイズが、ハラペーニョの事業アイデアを豊田市おいでん・さんそんセンターに相談したところ、紹介されたのがモビリティ・ビレッジでした。『農による生きがいづくりを応援したい』という思いを共有し、2022年にハラペーニョプロジェクトがスタートしました。

早速、共同で商品開発に取りかかり、同年10月にハラペーニョ味噌を発売開始。

杉本さん「愛菜農園のメンバーでピーマン味噌を試作していて、商品化を考えていたのですが製造許可がない。どうしようと考えていたところ食品の事業をしているワイズさんと出会いました。ピーマンをハラペーニョに変えたらどうかという案が実現しました」

とよた愛菜農園のメンバーがハラペーニョの種を育苗し、正晴会のメンバーに配布。最初は、7軒で約200からスタートし、現在では10軒、約1200株のハラペーニョが栽培されています。

正晴会メンバーが育てたハラペーニョは、ワイズが買い取ってハラペーニョ味噌やワイズオリジナルのハラペーニョソースなどに使っています。


豊田市駅前の商業施設で地元中学生といっしょにハラペーニョ味噌をPR

江崎さん「ワイズさんが買い取ってくれることで、旭元気野菜プロジェクトの活動運営金が増えています。野菜の集荷と運搬を担う人がボランティアではなく、スモールビジネスとしてやれるようになる日が遠くないかもしれません」

 

増えるハラペーニョプロジェクトの仲間

 

ハラペーニョプロジェクトで良い循環が巡りはじめています。正晴会のメンバーは野菜づくりの楽しみが増え、ワイズは自社事業と同時に旭地区への貢献ができる。モビリティ・ビレッジは活動運営金の心配が減り、旭元気野菜プロジェクトが継続できる。

この良い循環の輪を広げるため、ハラペーニョプロジェクトのパートナーを募集したところ、主旨に賛同し協力してくれる仲間が増えています。


プロジェクト初期からのパートナー清酒菊石蔵元の浦野酒造(左・杜氏の新井さん、右・営業の吉岡さん)
モビリティ・ビレッジのボランティア会員の紹介でつながった

 

豊田市内のcafe riccoオーナーシェフ松田高光さんもその一人です。cafe riccoは、旭地区からスーパーやまのぶへの配送ルート上にあり、4年前から野菜を買ってくれていました。ある日、江崎さんがハラペーニョ味噌の試食を渡したところ、毎年夏のメニューとして作っている冷やし豆乳坦々麺のトッピングとして採用してくれたそうです。

松田さんは「いつも野菜を作ってくれている旭の生産者にお礼がしたい」と、ハラペーニョを使ったメニューのふるまいを自ら提案。2023年9月に旭元気野菜プロジェクトが企画したハラペーニョ収穫体験会の時に、わざわざお店を閉めて駆けつけ、関係者のために腕をふるいました。


試食会でメニューの説明をする松田さん


お店で提供している冷やし坦々麺の試食


ピザやジャムなどハラペーニョの辛みを生かした試作メニュー

毎年、地域課題解決のための活動を行なっている地元の旭中学校2年生は、2023年度、ハラペーニョの栽培について学んできました。2024年度は『旭ハラペーニョ部!』としてハラペーニョのメニュー開発や宣伝に取り組んでいくということで、旭元気野菜プロジェクトと共に準備を進めています。

 

プロジェクトを続けるそれぞれの想い

 

旭元気野菜プロジェクトは、8年目、ハラペーニョプロジェクトは3年目に入ります。どのような思いで活動を続けているのか聞いてみました。

江崎さん「会社を定年しても人生まだ半分残っているので、それまでとは全く違う環境に身を置いてみたいと思い始めました。やってみると、例えばイベントでの試食提供ひとつとっても、営業許可がいることなど新しく勉強することがとても多いし、旭地区の優しい方たちと出会えて、やっていて良かったと感じます。モビリティ・ビレッジが担っていた旭元気野菜プロジェクト運営の役割は少しずつ旭地区の方に手渡していこうと思っていますが、サポート役として関わり続けたいです」

今村さん「私はハラペーニョプロジェクトの担当者として、1ヶ月の半分は旭地区の加塩町でお借りしている古民家にいて、お祭りや草刈りなどの行事にも参加しています。地元の方たちが家族のように温かく受け入れてくださって、地域に愛着が湧きます。地域のみなさんがハラペーニョ栽培に協力してくれているので、そのおいしさをたくさんの方に知っていただけるように今後も商品開発に力を入れていきたいです」

正晴会鈴木さん「モビリティ・ビレッジの江崎さんたちと集荷のルートを決めたり、野菜の値付けやラベル貼りをしたり、苦労したこともありましたが、現在ではやり方が確立され、『出荷してみませんか?』と気軽に地域の人を誘えるのは非常にいいこと。ハラペーニョプロジェクトは、多くのメディアに取り上げられ、旭地区のPRにもつながっています」

 

95歳安藤かなさんの変化

 

旭元気野菜プロジェクトで、一番多く野菜を出荷しているは、95歳の安藤かなさん。今年度、ハラペーニョは80キロ近くを収穫したそうです。鈴木さんへの取材中、「最近、かなさん、変わってきたと思うんだわ」と一言。「そっけない態度を取ることが多い人なんだけど、かなさんが取材された新聞記事を見せると『いやだわ〜!』と言いながら切り抜きを持って帰る。うれしいんだと思うよ」と続けました。

田舎と街の境界、個人と企業などの立場を越えて無理なくみんなで支え合うこの2つのプロジェクト、みなさんどう感じられましたか?

もしどこかで旭産の野菜やハラペーニョの商品を見かけたら、ぜひプロジェクトを思い出してお手にとってみてください。

・ハラペーニョプロジェクトの活動状況、ハラペーニョ商品の購入先についての情報は以下のリンク先をチェック!
https://instabio.cc/waiwaifarm

 

きうらゆか

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1979年生まれ。2014年、夫のUターンに伴って豊田市山村地域・旭地区に移り住む。女性の山里暮らしを紹介した冊子「里co」ライター、おいでん・さんそんセン...

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