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私、学び、幸せ。ぐるぐるスパイラル|vol.2 カフェ、農業、福祉の学び『まずはやってみる』の姿勢で

コラム

なりたい私がある。学ぶことで私が新たに作られる。少し幸せに近づいた気がする。そのうちにまた、なりたい私がみえてくる。
「私」「学び」「幸せ」。ぐるぐると螺旋を描くように、3つをくりかえしながら進んでいく。
社会の変化を気にしながらも、自分らしく生きるためのヒントは、このスパイラルにあるのではないか。
そう考えて、「学ぶ人」たちに話を聞くことにしました。

豊森なりわい塾で学んだことをきっかけに、価値観が「やりたいことがあったら、まずはやってみる」へとダイナミックに変化し、会社員を続けながらご主人が起業した予約制日本茶カフェ「みるる」をサポートしている山田妃花留(ひかる)さん。先を見据えた学びを続けている実践者です。何足もの草鞋を軽やかに履きこなしている山田さんに、今のこと、これからのことをお聞きしました。

 

「買う」から「作る」へ

 

―現在のご活動について教えてください。

メインは週5日のフルタイムで会社員です。その傍らで夫が起業した自宅併設の日本茶カフェ「みるる」(以下、みるる)のサポートをして2年半ほどになります。

みるるでは、お茶や五平餅などを提供しています。安心安全な食材にこだわっていて、お茶に関しては自家栽培のものに加え、茶農家さんへ実際に足を運び茶畑を見せていただいた上で納得したものを扱っています。そのほか五平餅に使うお米など、安心なものを使おうと行きついたのが、「自分たちで作る」ということ。

木がふんだんに使われていて温かな雰囲気の店内

 

今年から農ライフ創生センターで行われている2年カリキュラムの「担い手コース」で農業を学んでいます。それと並行して、旭地区で土地をお借りし、お米とお野菜、お茶を栽培しています。実際に「自分たちで作る」ということを今年から始め、収穫ができて喜んでいるところです。

 

―旭地区の田畑は、どなたにご紹介いただいたのですか?

農ライフ創生センターの先生が旭地区伊熊町の方で、「これ作るんだったらこっちの畑がいいよ」と、作物の適性に合わせてご紹介くださいました。私たち夫婦が旭地区へ行くのは2日に1回位です。田んぼの水は毎日見なくちゃいけないですし、初心者の私たちが水をどう調整していいかわからないところを、ご経験のある地域の方が引き受けてくださり、大変助かっています。

その結果、今秋は1.5反で10俵の収穫がありました。初年度からしっかり収穫があると、モチベーションがあがります!

今年作ったカボチャ、スイカ、ナス、ミニトマト、サツマイモ、大豆や小豆も、殆どうまくできました。小豆は80株以上植えて、ずっしり3kgちょっと採れました。みるるでは季節のアイスクリームにあんこを添えてお出ししていて、この小豆であんこを炊く予定です。

これまで市販品を使っていた食材を、「自分たちで作る」に順次変えています。例えば南瓜アイスは全材料のうち半分以上、自分たちが採った南瓜を使っています。すごく南瓜の味が濃くて、お客様にもご好評をいただきました。今年採れたサツマイモもそろそろ熟成が終わるので、紫芋と紅あずまと安納芋の3種類のサツマイモを使ったアイスを、時期を変えてお出ししようと思っています。

―ご自身で栽培、製茶されているというお茶について教えてください。

「白茶(ぱいちゃ)」という中国茶があるんですが、それは新芽だけを摘んで発酵させて作ります。みるるではその白茶を春に作り、1~2月頃には、寒茶(かんちゃ)というお茶を作ります。両方とも、みるるの厨房で製茶しますが、揉んだりせずそのまま乾燥させます。

新芽とはいえ、汚れがついていたりするんですね。普通の製茶だと、最後の工程で茶葉をふるったり、金属に吸着させたりして不純物を取り除くのですが、私たちは最初に手で茶葉を一枚一枚洗います。

特に寒茶は、冬を越えるにあたって茶葉に虫が卵を産みつけることがあるんです。恐らくそのままお茶として飲んでも害はないと思いますが、虫の成分が…と思うと、気持ちはよくないですよね。

寒茶を洗うのが一番つらくて、作業しているうちに虚ろになってくるほどです(笑)。それだけの手間をかけるので、量はたくさんできなくて、今年の白茶に関しては夏過ぎに茶葉がなくなってしまいました。来年はもうちょっと頑張ります!

 

田畑にしてもお茶栽培にしても、農業がとても上手くいっていると感じているので、続けていきたいです。

現在の活動としてもう一つ。現在、通信制で福祉を学ぶ社会人大学生をやっています。エンジニアなので、福祉はこれまで全然関係のない分野でしたが、入学を決めました。

 

3つの学びがあったから、今がある

 

―現在にたどりついたのは、どんな学びがあったからだとお考えでしょうか。

 現在の活動にたどり着くまでには、3つの学びがありました。

まず1つめは、豊森なりわい塾(以下、豊森)です。

2018年に入塾した豊森は、私の人生の中で大きなターニングポイントでした。これまで会社員として暮らしてきた私にとって、資本主義社会は当然のことでした。でも豊森で様々なレクチャーを聴いて、これまでの「当たり前」にちょっと違和感のようなものを感じるようになりました。

それから、地域の中でたくさんのお役などを担いながら「百姓」として生活を成立させている方が、田舎には実際にいることを知りました。そういう生き方もアリなんじゃないかと思い始めたという意味で、豊森の影響は大きいです。それから、「自分が幸せになるために何をするべきか」ということをかなり考えさせられて、その延長線上でみるるを始める決意が固まりました。

豊森なりわい塾の受講風景

豊森を卒塾したのが2019年2月。卒塾後すぐに下山地区へ移住しようと動き始め、物件をご紹介いただきましたが、ご縁がありませんでした。その間に、移住する気まんまんで売りに出していた当時住んでいたマンションに、買い手がついてしまったんです。それで8月までに退去しないといけなくなり、「住むところがない!」と困ってしまいました。

その頃、夫の元実家が10年近く空き家になっていたんです。だったら私たちがうまく活用すればいいのではと、その家で暮らすことにしました。

構造を残す以外は全てリフォームして、完成したのが2020年4月。すぐにみるるをオープンしました。リフォームを考えた時点で、全て木質にすることや、コロナ前でしたが「時間無制限で気兼ねなく過ごせる個室を作る」というイメージはしっかり固まっていました。

お客さんに心からリラックスしてほしいと選んだ椅子

 

みるるのサポートを始めることができたのは、豊森で「自分が何をやりたいか」を見つめることができたこと、ちょうどここが空き家になっていたこと、そんなラッキーが続いたおかげだと思っています。

2つめの学びは、2019年の1月に私の祖父が亡くなったことです。実家が北海道なので、亡くなる瞬間には立ち会えなかったんですが、斎場で対面できました。その時の祖父は、ちょっとホッとしたような、そんな顔をしていました。

人間だれでも人生は一度きり。いつか私が棺桶に横たわった時に、笑顔で「自分の人生ありがとう」って言って焼かれに行けるのか?その時、祖父の顔を見て考えました。世間体を気にしていろんな我慢をして意地を張ってくらすより、一度きりの人生を、自分の本当にやりたいことをやった方がいいと思ったんです。

やってみて違うなと思えば、引き返してもいい。今すぐ会社を辞めるとかいうことではなく、この先に違う道を考えてもいいのかなって思えたことが一つの学びだったと思います。

3つ目の学びは、メンタルが落ち込む経験をしたことです。会社員生活のなかで、周りには技術的に優秀な方が多く、それに比べて自分の能力が劣っていると引け目を感じていました。

会社の勧めで回復プログラムに通い、自分の考え方の癖を見つめ、ポジティブな考え方を学んだことで、人と比べるのでなくて、自分がどれだけ頑張れているかという絶対値で評価をすればいい、と気づくことができました。

さらに言えば、適材適所というように、自分の活かせる部分を自分自身で把握して、それを活かせる場所へ自ら行く、みたいな人生の過ごし方もいいんじゃないかなと思ったんです。

また、回復プログラムに通い始めて見えてきたことがあります。通われている方それぞれ、その方によって症状も違うし、特性も悩みもちょっとずつ違うので、画一的な対応ではダメだということです。支援してくれる看護師や作業療法士のお仕事は、すごく奥が深い。昔と違い、今の精神医療はそれぞれの症状に合わせた個別の対応をできるようになってきていることを目の当たりにし、そういうお仕事に、関心を持ちました。

この経験のおかげで、知らない世界を知り、これから長い人生の中で、生きづらさを抱えている過去の私みたいな方達を、何かしらの形で支えることができたら、と考えるようになりました。それで通信制の福祉大学に通うことに決めたんです。

 

「消費」「投資」「浪費」限りある時間を無駄にしない

 

―時間管理について心掛けていることはありますか?

9~10時間の睡眠時間だけは絶対確保しています。8時間以下だと調子が悪くなるんです。本業に影響しないよう配慮しつつ、大学の履修をはじめ、やるべきことはやれる時に、無理しない範囲でやる。一気にやる日もあれば、どうも集中できないと思えば10分で終える日もあります。

 

ある本によると、世の中にはお金や時間などについて「消費」「投資」「浪費」の3つがあるとか。「消費」は生活する以上は必要。「投資」は私なら畑や大学、茶道のお稽古や絵の練習など、先に繋がることにちゃんと時間をかけること。でも目的もなく動画サイトを見てしまうような「浪費」はしないように心がけています。

いつも手帳にスケッチブックとペンをはさんでいて、たとえば出勤時に駐車場に早く着いたら、それで絵を描きます。ちょっとした時間も活用して空き時間を作らないようにしています。

元々はあんまり計画を建ててやるのが得意じゃないんでしょうね。私の場合、思いついたら直感で動きます。「おっ楽しそうじゃん♪」とスキップで向かって行っちゃうみたいな。まぁ、とぼとぼと帰ってくることもありますけどね(笑)。

 

―これからめざしたいことを教えてください

まずは今やっている農業にしっかり取り組むこと。福祉をちゃんと学ぶこと。将来的には、介護福祉士資格をもつ夫と二人で、農福連携型の障碍者福祉施設を立ち上げることも考えています。

私がメンタルを崩した時、自分の茶畑に行くと、太陽があったかくて風が心地よくて、マインドフルネス状態でひとり黙々と作業をして、充実感と共に帰宅できる。農福連携がいいなと思うのは、それがすごく健康的だと感じたからです。

やっぱり人間にとって、太陽の光を浴びて土に触れること、作物が芽吹いて収穫できるまでお世話をすること、そういう過程もひっくるめて、ぜんぶ精神的にプラスになるんじゃないかと思って。農福連携で利用者だけでなくスタッフもご家族もみんなが、笑顔で幸せに過ごせる場所づくりができればと思っています。

実は私たちは、みるるの今の形がゴールだとは思っていません。もしかしたら来年にはお米屋さんやレンタルスペースになっているかもしれないし、将来的には、私たち以外の方たちがカフェをやっているかもしれない。

例えば障がいを抱える方たちが社会に復帰するために、食事を作ったり、接客係ができるような就労訓練をする場として、みるるを使うのもいいんじゃないかなと思っています。その時のニーズに応じてやっていこうと思っていて、先のことはまだ私たち夫婦にもわからない。いずれにせよ、何かしら活用できる形にしたいと思っています。

山田妃花留(やまだひかる)さん|北海道釧路市出身、豊田市在住。会社勤めの傍ら、夫が起業した予約制日本茶カフェ『みるる』の運営をサポート。現在、農ライフ創生センターで農業を学び、自分で米、野菜、お茶の栽培を実践中。通信制大学で福祉も学び、将来的には農副連携の事業をしたいと考えている。
予約制カフェ『みるる』
住所:愛知県豊田市保見ケ丘2-79
電話:080-6707-3132 
インスタグラム:@mirurutea

松本 真実

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北海道小樽市出身。ベルクマンの法則に則り身長173㎝。おいでん・さんそんセンターコーディネートスタッフ。豊森なりわい塾事務局。目下の関心ごとは自給自足や自治...

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