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新しい場はどうやって生まれたの?空き家をリノベした「hibi」施工班が語る完成までの日々【前編】

レポート

旬の野菜を使ったおいしいごはんが味わえると評判のカフェヒトトキ。週3日は事業所で働き、2日は自転車のツアーガイド、あとの2日は休むという働き方を提案するOPEN INABU
人が集う場があり、新しい働き方の提案がある。縁側で取材した遠藤颯さんや、土本梓生さんなどが移り住んでいるのが稲武地区です。

 

その稲武地区の中心街に、新たな拠点ができました。もともと雑貨屋だった築100年以上の建物を大規模にリノベーションしたhibiという施設です。1階が家具工房、2階は客室とコミュニティスペース、3階は住まいになっています。

 

2021年4月18日に内覧会とトークイベントが行われると聞き、hibiを目指しました。旧街道沿いを歩いていくと見えてきた、大きな窓と白い壁。受付して中に入ると、右手に木のカウンターとスツール。天井や壁には枝や葉のアレンジが伸びやかに飾られています。すみずみまで細やかな気配りがされた空間。来た人を大切に迎えている印象を受けました。

建物と土地のオーナーは、一般財団法人古橋会の古橋真人さん。企画・運営は、家具工房first-handとカフェヒトトキを営む松島周平さん・知美さん夫婦。リノベーション設計を担ったのはTUNA Architectsの森友宏さんと鈴木裕太さんです。

自分たちを「hibi施工班」と呼ぶこのみなさんが、トークイベントで構想から完成までを振り返りました。これからの時代、増える空き家を活かした新しい場の可能性や必要性が高まりそう!わかってはいても、実現させるためにはさまざまなハードルがありそうです。hibiはどうやって、そのハードルを乗り越えたのでしょうか?当日の空気感そのままに、お伝えします。

古橋真人(ふるはし・まさひと) 名古屋生まれ、岡崎育ち。豪農古橋家の出身。東京大学を卒業し、大手建設会社に勤務していた東京生活から2017年2月に稲武地区に移住。一般財団法人古橋会の経営者となる。古橋会は終戦直後に豪農古橋家の資産を遺贈した組織で、資産管理や歴史資料館を運営してきた。モダンな経営に刷新して、地域資源の価値化や伝統文化の継承のために尽力している。

松島周平(まつしま・しゅうへい) first-hand代表。家具職人。1級家具製作技能士。愛知県名古屋市生まれ。大学卒業ののち渡豪、その後北海道にて家具作りを学ぶ。2006年 家具工房「first-hand」設立。2015年カフェ「ヒトトキ-人と木-」オープン。2018年ウッドデザイン賞2018受賞(ソーシャルデザイン部門)。2021年「hibi」オープン
松島知美(まつしま・ともみ) 「ヒトトキ-人と木-」主宰、料理家。2級建築士、インテリアコーディネーター、職業訓練指導員。北海道網走市生まれ。大学で家具デザインと制作を学ぶ。職業訓練校木工科指導員を経て、建築会社・インテリア会社などで住宅や店舗のリノベーション、インテリアコーディネートに携わる。2008年より「first-hand」に参画。

TUNA Architects(ツナアーキテクツ) 建築設計のプロである元アトリエ系設計事務所出身の森友宏(もり・ともひろ)と、建築と社会をつなぐプロである元豊田市役所公共建築課出身の鈴木裕太(すずき・ゆうた)による建築設計事務所。愛知県瀬戸市を拠点に、企画では土地や物件の利活用、設計では住宅から店舗、オフィスビルまで幅広く計画を行う。

 

雑貨屋だった空き家でリノベーションスタート

 

古橋真人(以下、古橋)もともとここは深川講聖堂という雑貨屋さんでした。建物の所有者であるご主人が亡くなられてからは空き家になっていました。相続された家主さんは空き家の処遇に困ってみえて、稲武の中心街という抜群のロケーションにも関わらず利用されていませんでした。

ちょうどその頃、first-handの松島さん夫婦が民泊をやってみたいと言われていて、タイミングが合ったので、リノベーションプロジェクトを始めることにしました。

「建物のリノベーションを行ってから事業者を探す」という従来型の不動産賃貸では空間に魂が入らず魅力ある新しいタイプの拠点にはならないと考えていました。そこで松島さんご夫婦と企画からご一緒して、古橋会はオーナーとして家主さんとの交渉などを進めつつ、一緒に横並びの関係で完成に向かってやってきました。

松島さん夫婦は、私が稲武に暮らし始めた2017年2月にはすでにカフェヒトトキを運営されていました。素敵な家具に触れることができて、おいしいご飯を提供される、時代を捉えた素敵な場所だと思いました。

松島周平(以下、松島) 僕たちは2010年の4月に名古屋から稲武に移住してきました。カフェヒトトキを2015年にオープンした時から建物のオーナーである古橋会とお付き合いさせてもらっています。何か新しいことをやりたいねと夫婦で話していた時にちょうど真人さんから話をもらって、僕らがhibiのコンセプトをプレゼンしたのが2018年の冬でした。ヒトトキでやったクリスマス会の時で、みなさんいい感じで酔っ払っていますね(笑)

「ここからはじめる新しい日々」ということで、いろんな”B“を集めた場所にしたいというのが最初のコンセプトでした。Bedベッド、Breadパン、Breakfast朝食、Bicycle自転車、 Beerビール、 Beauty美、Book 本、Bean(coffee)コーヒー豆、Bread美、Body身体、Bee蜂、Brown rice玄米など。ほとんど当初のコンセプト通りにやっていけそうだと感じています。

 

 

地域での理解を得ながら前進

 

森友宏(以下、森) 1年が過ぎ、2019年になると僕らTUNA architectsが登場します。これは松島さんのコンセプトを元に作った模型を見てみんなで考えているところですね。

古橋 リノベーションが決まってから、空き家の権利関係のこと、片付けをどうするのかなど、みんなで夢を叶えるために必要な地固めにかかりました。結構時間がかかって、ある程度決着がついてきた段階でTUNAさんにお声がけさせていただきました。設計者に関しては難易度の高いリノベーション工事になることが予想されたので、とにかくやる気のある方にやってもらうことが一番だと考えていました。探していたところ縁あってTUNAさんをご紹介いただきました。

 古橋さん、松島さん夫婦の「稲武に新しい拠点をつくりたい!」という熱い想いを受け、設計を引き受けることにしました。2020年、いよいよみんなでhibiを作っていくという段階に入りました。まず最初に現況調査に入りました。

 

鈴木裕太 かなり生活感が残っている中を、ほこりまみれになりながら調査に入りました。

古橋 次は残置物の撤去です。撤去の相見積もりを取って豊田の街中に住んでいる家主さんの元に何度も通い、金額をお伝えしました。撤去をお願いし、建物自体も古橋会に引き継がせていただきました。

それから地元の宮司さんをお呼びして安全祈願祭を執り行いました。この時に自治区長さん、組長さんもお呼びしました。工事が始まる前に自治区の役員会にもご説明に伺いました。地域にきちんと周知することをとても大事にしました。

できるだけ稲武の業者さんに関わっていただくことも大切にしました。稲武でリノベーションというのは珍しく、業者さんにはとても苦労をおかけしたと思います。それでも次にリノベーション案件が出てくることを見すえて、声をかけさせていただきました。

森 ここから設計に入っていきます。とても複雑な建物だったので気合を入れないといけないなと。稲武にある建物を古橋さんからお借りして1ヶ月ほど出張事務所を設けて設計にかかりました。

これが当時の完成イメージです。

もともとの建物は手前の道路に面して開口部がありました。橋側には大銀杏、石垣、名倉川の美しい風景が広がっていたので、その自然をどうにか楽しめるようにしたい。そこで元々の建物の軸を読みかえるような建築の構成を考えました。

 

部分的に解体したり弱っている部分を構造補強したりする、既存の建物を生かした計画にしました。

完成後をイメージしたこのドローイングのように、もともと壁で閉じられていた部分が開かれることで、自然あふれる環境、旧商店街と建築を関係づけることができるようになっています。

>>後編/職人さん、地元業者の技術あっての工事に続く<<

 

取材 きうらゆか

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1979年生まれ。とよたとつながるローカルメディア縁側編集長。おいでん・さんそんセンターコーディネートスタッフ。2014年、名古屋市から豊田市旭地区に拠点を...

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