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山村地域の価値・魅力って何だろう?チームで話して得た気づき〜中高生座談会レポート後編

レポート

2021年8月5日、愛知県立足助高校を会場にして「中高生が山村の価値・魅力を考える座談会」が行われた。

前半の講演で登壇したのは、日本大学文理学部助教、R I N G Sセンター長の大澤正彦さん。大澤先生は「ドラえもんをつくる」というビジョンを持った人口知能(AI)の研究者で、「ドラえもん先生と考える山村のミライ〜新しいものさしは自分でつくる」というタイトルで、最新のAI研究をベースにしたお話をされた。

他人から与えられたものさしではなく、自分のものさしで生きていいという大澤先生の言葉を胸に、生徒たちは後半のワークショップに臨んだ。

ワークショップの事前準備として、足助高校の生徒4名と、足助、旭、小原、稲武、下山中学校からの生徒10名は2つの宿題に取り組んできた。一つは、山村の価値・魅力について。もう一つは、好きな写真とそれを選んだ理由について。

山村地域にお住まいの方は特に、中高生がどんなことを書いたのか気になるのではないだろうか。抜粋して紹介してみたい。山村の価値・魅力について、以下のような回答があった。

 

山村地域の中高生が感じる山村の価値・魅力

 

「自然」について
水や空気がきれい、星がたくさん見える。動物、生き物がたくさんいる。美味しい山菜が採れる。お米が美味しい。美味しい椎茸が作れる。時々野生の動物に出会う。ゴキブリが出ない。新鮮な野菜のおすそ分けがある。静か。虫がとても多い。

「人」について
あまり混雑しない。関わりが深い。いろんな人に教えてもらえる。話しかけてくれる人がたくさんいる。ナンバープレートすら覚えている。物々交換がある。あいさつを返してくれる。知り合いが多い。元気なご年配が多い。地域の人が町の発展に協力的。性格などがお互い分かっている。

 

「コト」について
お祭りが多い。サイクリングが人気。バスが街までつながっている。人形浄瑠璃がある。鯉恋まつり。花火が近距離で見れて迫力がある。情報が早く回る。夜が静かで落ち着く。地域の祭りや行事に参加することで、他にはできない貴重な経験ができる。

 

続いて、お気に入り写真と選んだ理由について、いくつか紹介したい。

 

山村地域の中高生がお気に入りの写真

 

人懐っこいカモシカ
「この子はよく家の周りをうろちょろしていて、寄ってきたり、なめてくれたりしてとても可愛かったです。足助にはこうした貴重な生き物がたくさんいます」

小原の稲作
「これは私の家の田んぼです。毎年家族で米作りをしています。山村ならではの広い田んぼでたくさんのお米を作っています。作っているのはミネアサヒでとても美味しくて大好きです」

 

通学路
「3年間、毎日のように通る場所です。夕方になると、山の間から見える夕日がとてもきれいで一日の疲れが吹き飛びます」

 

マウンテンバイクツアー
「稲武の山々を活用したマウンテンバイクツアーです。Inabu Base Projectが企画したツアーで、季節によってさまざまな景色を見ることができます。色々なコースがあり、どんな人も楽しめます」

 

巫女舞
「足助八幡宮で新嘗祭が行われた際に、巫女舞として参加した写真です。他に春祭りにも参加しています。伝統的なお祭りとそれに参加した経験を残していきたいです」

 

 

家の近くのカエル
「時々現れるカエルです。トノサマガエル(多分)で、5〜6センチくらいの大きさで、カエルにしては可愛いのでコイツがそこそこ好きです。虫を食べてくれるし、カエルはコロナとは関係なくていいものだと思ったからです」

 

 

チーム会議で得た新たな気づき

 

ワークショップは、3つの教室に分かれ、会場にいるメンバーとオンラインでつながっているメンバーがグループになって行われた。それぞれのチームには、日本大学の学生であり、大澤先生率いる次世代社会研究センターRINGSのメンバー4名が参加し、ファシリテーターを担当した。

まずは大学生が、自分が育った環境や故郷への想いを発表。その後、中高生がお気に入りの写真を紹介し、続いて山村の価値・魅力や新たな気づきについてチームメンバーで意見交換した。

その後、それぞれのチームでどんな話が出たかを共有した。

1班についての発表をしたのは、日本大学の遠藤さん。

「みんなが選ぶベストフォトは、小原地区の泥打ち観音になりました。通学路の集合場所として使われている昔からある場所のようです。山村の価値・魅力として挙がった一つ目は、住民の温かい心。例えば通学バスから降りた時、地域住民が「おかえり」と声をかけてくれたり、近所の方が農作物のおすそわけをしてくれたりすることから言えます。ある子が怪我をした時に、地域の方が駆けつけてくれて「大丈夫?」と声をかけていたこともあったそうです。

二つ目は、昔からあるものや、伝統が大事にされているということです。大人が子どもに歌舞伎を教えて、子どもが披露する会があったり、観音像があったりします。もう一つ、広大な地域なので、まだまだ新しい発見があるということが挙がりました」

続いて2班の発表をしたのは、足助中学校の斉藤さん。

「2班が選んだベストフォトは、稲武地区の氷瀑です。毎朝、地域の方が水をかけて作っているそうです。すごく迫力があって良いという意見がありました。山村の価値・魅力は3つ。地域の祭りや行事に参加することで、他ではできない貴重な経験が得られること、人と人との関わりが深いこと、ブルーベリーなどの農作物です。

新たに気付いたことは、野菜をおすそ分けしてくれたりする地域の方は優しい、香嵐渓が一番の観光地、都心には都心、山村には山村の魅力がある、都心に出ることで地元の魅力がより理解できるのではないかという5点です」

最後に3班の発表をしたのは下山中学校の猪俣さん。

「ベストフォトとして選んだのは、巫女舞です。少子高齢化が進んで、最近はあまりできていないのが現状ですが、続いてきた文化は大切にしていかなければいけないという意見が出て、みんなでこの写真を選びました。

山村の価値・魅力として挙がったのは、あいさつをすると地域の方があいさつを返してくれること、鹿や猪の肉が食べられること、時々野生の動物に遭遇することです。都市には無い、山村のいいところかなと思います。同じ山村地域の学校に通っていても、全然違う意見なども出てきたことが、新たな気付きでした」

言語化したところに問いを立てていく

 

3つのチームの発表にじっと聞き入っていた大澤先生。笑顔でこう切り出した。

「みなさん、お疲れ様でした!時間が短かったのにも関わらず、よくまとめきりましたね。熱心な姿勢、すばらしいと思います。今回、言語化してみて、みなさんが何パーセントくらい山村地域の価値や魅力に気づけたという納得感があるかはわかりません。10パーセントかもしれないし、50パーセントかもしれない。

今日の言語化をスタートにして、『何でそうなんだろう』、『具体的にどういうところなんだろう』という問いを立て続けると、『これって、世界中で豊田市にしかないのかもしれない』という発見につながるかもしれません」

今回の座談会の後、(仮称)豊田市山村地域の持続的発展及び都市と山村の共生に関する条例(案)の前文に、次の文言が追加された。『祭りや文化を通して地域とつながること』。今回の座談会の内容が条例に反映されたことはもちろん素晴らしいことだけれど、何よりも良かったことは、中高生のみなさんの心に「新しいものさし」が生まれたことではないだろうか。後日アンケートの生徒さんたちの感想に、そのことが現れているように感じた。

「大澤先生のお話を聞いて、自分の中で変えていくべき点を見つけることができたので、とても満足しています」

「大澤先生の夢の話を聞いて自分にも可能性があると信じて将来設計を綿密に立てたいと思いました」

 「参加する前は山村と都会を比較して、都会のほうが魅力的だと思っていましたが、参加後は山村にも魅力がたくさんあり、山村と都会どちらも魅力的でどっちのほうが上など決める必要はないんだと思えるようになりました」

 

きうらゆか

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1979年生まれ。とよたとつながるローカルメディア縁側編集長。おいでん・さんそんセンターコーディネートスタッフ。2014年、名古屋市から豊田市旭地区に拠点を...

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