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樹皮や葉にさわってみる【今だから、からだで感じたい森の植物4回】

コラム

自然を楽しむには、五感を使って植物を観察することが大切です。

今回は、そのひとつ触覚を使って、楽しむ方法を紹介しましょう。観察場所は、豊田市の外環状道路に接した豊田市自然観察の森です。ここでは、定期的に自然に親しむためのいろいろな観察会が開催されますので、それに参加するのも良いでしょう。ぜひ、自然観察の森をゆっくり散策して下さい。

イラスト:北岡明彦

(その1)アベマキ(ブナ科)

子どもの時に、野山で拾った大きな丸っこいどんぐりが、アベマキのどんぐりです。よくクヌギと間違えられますが、クヌギは人が植えたものばかりで、自然のものはありません。

アベマキとクヌギのどんぐりはそっくりで、区別するのはなかなか難しいですが、樹皮は全く異なります。アベマキの名前の由来は、「あばたまき」で「あばた面のまき」が変化したものです。「マキ」はコナラのことで、どんぐりがなる木の総称です。

アベマキの大木の樹皮を爪で押してみると、その由来がよくわかります。爪が容易に、樹皮にめり込んでいきます。実は、コルク質がものすごく発達しているのです。第2次世界大戦中には、本物のコルク(地中海沿岸産のブナ科の一種であるコルクガシがら作る)が輸入できなくなったため、このアベマキの樹皮を、その代用品として使ったそうです。

一度、アベマキの樹皮を、横から爪でギュッと押してみて下さい。びっくりしますよ!

 

(その2)ヤブムラサキ(シソ科)

樹木の中で、紫式部三姉妹と呼ばれるグループがあります。それが、シソ科(以前はクマツヅラ科)に属する、ヤブムラサキ・ムラサキシキブ・コムラサキです。いずれも豊田市内に生育していますが、特に前二者は普通にあり、自然観察の森でもたくさん見ることができます。

3種類とも、実が美しい紫色をしていて、名前もその色に由来しています。そのうち、長女のヤブムラサキは、葉っぱの両面に白色の短毛が密生していて、触るとフカフカなのが特徴です。ムラサキシキブとコムラサキの葉には毛が少なく、触った感覚が全く異なります。愛知県の樹木の葉の中では、ビロードイチゴ(バラ科の木苺の一種)とともに、最もフカフカして気持ち良い種類です。もっとも、ビロードイチゴは木苺ですから、トゲがあって痛いという欠点があります。

ヤブムラサキは実も、美しい紫色をしています。その美しい実を守るためににも白毛が密生していて、非常に特徴的な姿をしています。

今年の夏は、ぜひ、ヤブムラサキの葉を触ってみて下さい。感激しますよ!

 

(その3)ウツギ(アジサイ科)

一般的には、ウノハナ(卯の花)の名前で知られていますが、この名前は陰暦の四月の異称である卯月(うづき)に花が咲くことから名付けられたものです。歌には「卯の花に匂う垣根にホトトギス早も来鳴きて」(※)とありますが、残念ながら花には弱い甘い香りがあるだけで、匂うという程ではありません。

標準和名はウツギです。これは、枝の芯が空洞になっていることから、空木(ウツギ)と名付けられたものです。とっても面白いですので、ぜひ一度折ってみて確認してみて下さい。その時は、まず「ごめんなさい」と言って下さいね!

このウツギの葉の触覚が独特です。超ザラザラで、頬を数回こすったりしたら、ヒリヒリして涙が出るほど痛くなります。ルーペで見てみると、く固いトゲのような毛が生えていることがわかります。同じく自然観察の森でもわずかに見られるムクノキにも固いトゲ状の毛が生えていて、木工作業の仕上げ砥石として使えるほどです。

 

豊田市内には、1000種類をはるかに越える植物が自生しています。区別の難しいグループもありますが、多くの種類は、葉・花・実・樹皮などに、それぞれ特徴を持っています。最初はみんな同じ種類に見えてしまいますが、ちょっと慣れてくると、少しずつ区別できるようになります。一度、じっくり観察してみてください。

(※)『夏は来ぬ』(なつはきぬ)は、作詞:佐佐木信綱、作曲:小山作之助により1896年に発表された日本の歌曲。

北岡明彦

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1954年生まれ。名古屋大学農学部林学科卒。長年、愛知県の林務課に勤める。2005年度より新設された豊田市森林課へ出向。根っからの昆虫大好き少年が、植物・野...

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