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実例で確かめるリノベーション5つのメリット【空き家を事業に使うメリット教えます#3】

コラム

第2回目では、リノベーションをススメル5つのメリットについて、お話ししました。

 

では、実際にメリットがあるのでしょうか?

今回は、空き家をリノベーションして福祉施 設として活用している『地域密着型デイサービスあんじゃない(以下、あんじゃない)』 を紹介します。

 

あんじゃないは2019年10 月、豊田市槙本町でデイサービス事業を始めました。

デイサービスとは、介護保険法での名称は「通所介護」となっている介護保険サービス で、ご利用者が送迎車による送迎などで事業所に通うことで、食事や入浴などの日常生活 上の介護や機能訓練などのサービスを受けることができる施設です。あんじゃないは、 元々住宅の用途だった建築物を福祉施設にリノベーションしました。

 

建築基準法が改正されて、
リノベーションで用途変更することが容易になった!

 

空き家を福祉施設として活用したいというご相談をいただいたのは2019年3月半ば頃でした。リノベーションを大々的にするのではなくて、そのままの状態をできるだけ残して活 用したいという要望を受けました。

前回のコラムで「建築基準法が改正されて、リノベーションで用途変更することが容易になった」とお伝えしましたが、この時はちょうど建築基準法改正が施行される3ヵ月前でした。6月末からであれば、用途変更がかなり容易になることを伝えて進めることになりました。 あんじゃないは、建物の使用部分を決め、床面積200㎡以下の特殊建築物にしたので、確認申請の提出が不要でした。そのため、6月末からリノベーションにかかる日数を割り出し、オープン日までのスケジュールを立てることができました。これは、建築基準法が改正されたことの大きなメリットの一つです。

 

オリジナル性の高いものになる!

 

今回のリノベーションは、できるだけそのままの状態を残して活用する事が要望の一つにありました。一般的にリノベーションを行う際には、壁・天井や床を改修して新たにするケースが多いです。しかし、あんじゃないは床の一部をフローリングに張替え、壁と天井 はほとんど既存のままにしました。

それが他の福祉施設とは違ったオリジナル性を与えました。

 

新築したり、壁や天井を改修したりする場合、きれいになるのですが、それが逆に施設の 装いを強くしてしまいます。あんじゃないは昔の家の壁や天井が自宅の装いに近く、利用者さんは気を張ること無く滞在できるのではないかと思います。廊下についても、施設であれば人と人 がすれ違うことができるだけの幅はあるけど、あんじゃないは自宅と変わらない幅です。 一見使いにくいように思えますが、壁に手を添わせるなどして歩くことができます。もちろん、手すりも付いています。自宅とあまり変わらない環境は利用者さんが慣れていて、安心感につながりますね。

 

リノベーションでも、新築と同等の機能性を備えられる!

 

前述した床の一部以外にリノベーションしたのは、トイレ、洗面化粧台、お風呂です。

トイレやお風呂は介護の方が付き添うことがあります。その時 自宅と同じ寸法では、介護ができない場合が発生し、利用者さんに不安を与えてしまう可能性があります。そうならないために、お風呂は広いユニットバスを設置し、物入れだったところをトイレにリノベーションしました。もちろん、新築された建築物と同じ性能を持ったユニットバスとトイレが設置されています。

コストコントロールができる!

 

これまでのリノベーションの内容を見ていただくと、お風呂など水回りに予算がかかっていることがわかります。もちろん、ここに紹介していない部分で例えば、残っていた家具等の処分などいろいろと他にも費用が発生していますが、リノベーションしなければなら ない部分には当然予算を割かなければなりません。

しかし、そのままの状態でも活用できる部分があったり、自分たちでもできることは自分 ちでやったりすることで予算を抑えることができます。あんじゃないでは建築作業ができる方がいました。そうでない場合でもお施主様やその友人などでDIY としてできる作業 とできない作業の区別を専門家としてアドバイスをさせていただき、できそうな作業をご自身でやったケースもあります。

危険な作業などはお勧めしませんが、できる作業であればお施主様の方にやってもらえる方が良いと思っています。なぜなら、自らリノベーションに携わることでその建築物に愛着が湧くからです。長年民家再生・リノベーションに関わっている中で感じていることは、 ほとんどの方は自分が一生懸命手掛けたものは大切にしたくなるということです。長い年月を共に過ごすのですから、愛着を持って活用してもらえることが設計者としてとてもうれしいことなのです。

 

地域や社会へ貢献ができる!

 

あんじゃないの様に空き家を活用して事業を始めると、今まで誰もいなかった家に人が集まり、地域のコミュニティができます。特に中山間地域では人口が年々減少しているので、あんじゃないができることで人と人とのつながる機会が生まれます。また、福祉施設でなくても、空き家を活用することで人の往来が発生し、その地域の活性化につながります。

 

設計士の仕事

 

民家再生・リノベーションをススメル5つのメリットを、あんじゃないの実例をもとに紹介いたしました。

ここで、設計士は一体何をしたのかを紹介します。まず、現況を実測して図面を作成します。みなさん図面というと、間取り図のような部屋の配置がわかる平面図が思い浮かぶと思います。実はそれだけではありません。高さの関係がわかる断面図や建物の見た目が分かる立面図があります。それらの図面も作成します。民家再生・リノベーションの設 計の中で一番難しいところでもあり、魅力なところでもあります。

建築基準法改正の部分でも前述しましたが、改正内容が適用されるのは200㎡未満の建築物に限ります。現況の建物が200㎡より大きいか、それより小さいかを確認する必要があります。現況図面を作成し、お施主様と計画の打ち合わせをします。あんじゃないの建物 は、200㎡を超えていました。そこであんじゃないとどこからどこまでを活用し、どこを完全に封鎖して使用しない範囲とするのかを決めました。

以前は住宅でしたがリノベーションしてからは福祉施設として使用するので、当然関係してくる法律基準が変わってきます。その基準に適合するように設計します。また、建築基 準法だけではなくその他の関係法令も確認する必要があります。特にどの用途にも関係するのが消防法です。やはり、人命に一番影響してくるためです。

あんじゃないの場合は、 介護保険法も関係しましたので必要事項を図面に盛り込みました。これら計画した内容を 図面に反映させて、各関係機関に提出できるようにするのです。

今後、都会から少し離れた中山間地域で事業を展開していこうとご検討の方のお役に立 つことができたでしょうか?もっと詳しく話を聞きたいという方はぜひ、気軽に何でもお問い合わせください。お役に立てる情報を提供できます。お待ちしております。

ブログも更新していますので、訪問してくださるとうれしいです。

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電 話:080-9117-7194       
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一級建築士事務所 風とガレ吉谷 真也

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民家再生技術者/既存住宅現況調査技術者/暮らしの省エネマイスター 学生時代に欧米の建築や街並みを巡る旅をする。この時、ヨーロッパの歴史的建造物を活かした街並...

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