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今を全力で楽しむお寺暮らしのふたりの虜になっチャイナ【モヤモヤ大学生の旭暮らし回想録#3】

コラム

モヤモヤ大学生の旭暮らし回想録では、現役大学院生の市川里穂さんが、大学生だった頃、豊田市旭地区に短期滞在したこと、その前後をふり返ります。田舎出身なこと、自分について、モヤモヤしていた里穂さんの目に田舎はどう写ったのでしょう? カバー・文中イラスト:るり(Twitter@kknk_1217)

〜あらすじ〜
高校まで、“何もない”農山村で生まれ育ち、息苦しかった私。大学で都市部に出るも、なぜか心が満たされずモヤモヤし続ける日々…。大学2年生の時、ひょんなことからTEDxNagoyaUを見に行き、そこで出会った高野先生が住む豊田市の中山間地域・旭地区にお試し移住をすることに。夏休みの3週間、福蔵寺を拠点にしながら移住者の暮らしに密着させてもらう。

前回のコラムはこちら

 


 

福蔵寺で暮らし始めて4日目。

私は、仏様がいる大広間の隣の、6畳の部屋で寝泊まりしていた。

家族に「夜とか怖くないの?」と聞かれたけど、不思議と大丈夫だった。

むしろ、大きな力の傘下にいるような気がした。“守られている”安心感があった。

 

お寺に住む、旭地区の移住者さんたちは、みんな思い思いのリズムで過ごしている。

地域の仕事で忙しく、朝と夜しか会えない人もいたし、逆に日によっては昼に起きてお寺で趣味のアクセサリー作りを楽しんでいる人もいた。

 

中には、毎日必ず朝6時に起きて、仏さまにお経をあげる習慣のある人がいた。

1日の初めに仏さまに感謝を伝える、なんて素晴らしいんだろう。

仏教について関心があるわけでないのに、その習慣に謎の憧れを抱いた。

わたしは夜型人間で、規則正しい生活に憧れていたというのもある。

だからお寺に来てすぐ「これから毎日、私もこの人と6時にお経を読んで健康になってやるんだ!」と決心した。

でも実際には、6時に起きてお経を読んだのは、3週間のうちの2日だけだった。

たいていは、お経にも気づかないほど熟睡するか、お経を聴きながら二度寝していた。

 

規則正しく生活できる人が羨ましいな、と毎日小さく落ち込んでいた。

 

私は、旭地区の移住者さんに1日同行して、暮らしぶりを見学させてもらっている。

この日は朝から「よっち」「つっち」という愛称で旭地区の人々に親しまれていたお兄さんたちに同行した。二人とも福蔵寺に住んでいた。

 

彼らの第一印象は「ヒッピーなお兄ちゃん」。2人とも長髪を頭の後ろでお団子にしている。それが凄く似合っていたし、カッコよかった。2人で一つの個室を使っていて、Tシャツやズボンなどお互いの服を適当にシェアしているらしい。

 

血が繋がっていないということに驚くほどに息がぴったりで、「よっちつっちは運命共同体だね!」と周囲から言われていた。

よっちとつっちは20後半で、新卒で就職した会社を辞めて福蔵寺に来たらしい。

 

地域への新聞配達、薪割り、子どものフリースクールのお手伝いなど、複数の仕事で生計を立てていた。

 

そんな二人の1日を体験するために、福蔵寺のバンに乗せてもらい薪割りの仕事場に向かう。

 

「薪割り=斧を高い位置から勢いよく振りかざす、きつい作業」のイメージがある。

体力に自信の無い自分にできるかな…?というか足手まといになりそう。そうなったら嫌だなぁ。という心配が、仕事場に近づくほど増していった。

 

「到着~!ここが仕事場!」という声と共に、沢山の薪が積まれている場所に着いた。

 

三人で汗だくになりながら2時間ほど仕事をして、最後によっちのスマホで記念撮影をした。

それから、バンで近くの川に向かった。川を見るなり二人はざぶんと飛び込んだので、私も続いてみた。汗だくだった分ひんやりした水が気持ちよくて、疲れが一瞬でひいていく。

バンに積んであった釣り竿を持ってきて、川釣りもした。私の実家の近くには川が流れているくせに、川釣りをしたのは人生で初めての経験だった。

 

ふと、よっちとつっちに「社会人のころを振り返ってどう思う?」と質問をしてみた。

すると、「断然、今の生活の方が楽しい」と言う2人。

 

「大学時代にはめちゃくちゃ面白かったのに、社会人になって急につまらなくなった同級生なんていっぱいいる。久々に会って、がっかりする。」

 

その後、二人が勝手に「秘境」と呼んでいる岐阜県の温泉に連れて行ってもらい、更にさっぱりした。

 

バンに乗ってお寺への帰路につく。

よっち、つっち、私は、3人とも音楽が好きだ。当時私がハマりかけていた「相対性理論」のオススメ曲を聞いてみた。

すると、「チャイナアドバイス」という曲をスマホで流してくれた。

 

♪I wanna do it do it yeah 

泡と消えそうなshy love 

I wanna do it do it yeah

泡とはじけるチャイナ 

そんなやつ やめチャイナ チャイナ チャイナ

チャイナ チャイナ・アドバイス

もう私の虜になっ チャイナ チャイナ

チャイナ チャイナ・アドバイス♪

 

私はこの曲を初めて聞いたけど、曲調が最高にポップで気に入った。

やくしまるえつこさんの無機質な声と軽やかなメロディー。子どもの言葉遊びのように、簡単な言葉で韻を踏みまくる。パッと聴いただけでは意味が無さそうに思える歌詞だけど、よく聞き込んでみると、芯の通ったメッセージがある曲。

 

私の中で「チャイナアドバイス」の雰囲気が、よっちとつっちの人物像と重なる。強い意志があるけれど、あえてフルスイングした生活はせず、純粋に“今”を楽しむ余白を作っている。その姿に、地域の人たちは魅了されるんだろうなと思った。

窓全開で、びゅんびゅん風に当たりながら聴く相対性理論、“青春”だったなぁ。

当時(今から4年前)の私は、「一つの企業で働くのが良いこと」と思っていた。

でも、よっちとつっちのように、あえて企業勤めをしないことでイキイキと暮らす人たちのおかげで視野が広がった。精神的収入を重視して仕事選びをするのもいい。

 

また、社会の「こうあるべき」というレールに乗れるか乗れないか、あるいはあえて乗らないかという選択自体は、人の魅力に関係ない気がした。

どちらにせよ、今この瞬間を心から楽しみ、余裕があることが、人を引き寄せる魅力に繋がるということを学んだ。

 

…だから私も、たとえ永遠に早起きが苦手でも、いちいち落ち込まない練習をしようっと。

 


当時のお二人

現在は、関東でお仕事されています

市川里穂

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大学時代、モヤモヤしていた頃、TEDを聞いたことがきっかけで豊田市旭地区のお寺に飛び込み滞在。「ミライの職業訓練校」に参加し、人生のモヤモヤを更に深めつつ、...

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