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普通に、無理せず、背伸びせず【「喫茶室転々」マスターが語る暮らしとつながる商いのカタチ第2回】

コラム

こんにちは、足助・冷田地区の古民家カフェ「喫茶室 転々」の小柳卓巳(こやなぎたくみ)です。平日はITエンジニア、休日は雇われマスターとしてコーヒーを淹れたりしています。

 

本コラムでは、毎回、転々のメニューをご紹介させていただいて、そこにまつわるエピソードや、どういう考えのもとでつくりあげたのかお伝えできればと思います。

 

さて、今回ご紹介させていただくのは「コーヒー」です。

 
 
 
 
 
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突然ですが、みなさんはコーヒーや紅茶やお茶をどんなときに飲みますか?

喫茶店やカフェにはどんなときに行きますか?

おそらく回答は十人十色かなと思います。「休日とっておきのお店で絶品スイーツと一緒に!」と明確で特別な目的を持っている方もいれば、「特に理由はないけど習慣で飲む」とか「仕事の隙間時間ができたときに暇潰しに行く」とか成り行きや何となくという方もいて、回答の幅が広いのではないかと思います。つまり、コーヒーや喫茶店は、誰の目的にも寄り添うし、どんなときにも傍に置いておける懐の広い「モノ」であり「場」ではないかなと思っています。僕自身は、毎朝の仕事前にスイッチを入れるためのモノだったり、子どもの習い事が終わるまで休息する場だったり、「日常のひとつ」になっています。

 

転々でお出ししているコーヒーは、「スペシャルティコーヒー」と呼ばれる高品質の豆を生の状態で仕入れ、一粒一粒丁寧に選別して、温度管理をしっかりしながら焙煎しています。淹れるときも温度や湯量に気を配りながら、少しでもおいしいコーヒーになるよう努めています。さらに、もうちょっと広い視野で語ると、発展途上国で報われない生活をしているコーヒー農園の人々が少しでも正当な対価が得られるようにと、人知れず遠いところに思いを馳せていたりもしています。

映画『おいしいコーヒーの真実』公式サイト (uplink.co.jp)

 

けれど、恥ずかしながら僕には通を唸らせるような高い焙煎技術も抽出メソッドもないですし、たまに僕より詳しいお客さんがくるとおどおどしちゃう半人前です。シフォンケーキについても、製菓学校を出たわけでもなく、有名店で修業したわけでもなく、綺麗にデコレーションする技術もありませんし、ただ自分たち基準でウマーとなるものをお客さんにお裾分けできたらいいなと思っているだけです(…あれ、だいぶ志低めなことを言ってる気がするけど大丈夫かな。一応フォローしておきますけど、日々もっと美味しく、もっと喜んでもらえるようにと、こじらせ続けていますよ!)。

 

誤解を恐れずに言えば、僕にとってコーヒーは所詮「日常の飲み物」のひとつでしかありませんし、お客さんにもそう思ってもらえれば十分だと思っています。フェアトレードも、その延長にある当たり前の選択肢であるべきだと思っています。それから、転々の建物だって、街に住んでいる人からすればいわゆる「古民家カフェ」で、言葉だけで言えばちょっとオシャレなジャンルになるかと思いますが、地元の人にとっては極々普通の家ですし、別に古民家カフェがやりたかったわけでもなく、単に運よく使わせてもらえる物件が古民家だっただけです。そもそも、前回書かせて頂いた通り、喫茶店を始めたのだって好きなことをやっていたらマダムにそそのかされて流れで開いてしまったわけで。サンキューマダム。

 
 
 
 
 
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コーヒーもケーキもお店もライフスタイルも、たまに褒めて頂くことがありますが、ひとつひとつを見るとどれも普通だと思っています。

 

転々はそんな普通のモノだらけだからこそ、場にゆるさとか懐の広さみたいなものが生まれるのではないかと思います。それで目的のない人に「ただ行くという目的」が生まれたり、自然体で過ごしても良いんだと思える心地よい余白みたいなものが生まれたら良いなと思っています。そういう余白を気に入ってくださるお客さんにとって、ちょっとだけ特別な場になることで「通うお店」になっていけるのではないかと思っています。いや、実際どうなんでしょうね。よく来てくださる方に理由を聞いたことがないので、そうだったらいいなと勝手に期待で言っています。ただ、聞くのは野暮ですね。あの人はどんな理由かなあと想像して楽しむことにします。もしお店で僕がにやにやしていたら、そういう妄想タイムだと思って気持ち悪がらないでください。

 

それから、僕も妻も、背伸びせず、走らず、無理せず、という運営を心がけており、地域や子どもの行事が最優先で、その上でやれる日に営業するというのが基本的な考え方になっています。それに、お出かけしたい日があれば稼ぎ時であるはずの土日でもお休みにするし、忙しすぎる日が続いたらメニュー絞っちゃったりもします。

そうやって、自分たちの暮らしを優先してお店側を合わせるやりかたが、ダブルワークという一見するとしんどそうに思えるライフスタイルを続けていくコツかなと思っています。とは言っても実際、忙しいは忙しいですけど(笑)、心地よい忙しさってあるじゃないですか。そこを狙っていけたらいいなと都合よく思っています。だって、せっかく楽しむためにお店を始めたのに、義務感や苦しみにしたくはないですから。お客さんだって、やたら慌ただしい厨房だったりピリピリした店員さんがいる喫茶店じゃ落ち着かなくてあまり通いたくないと思うんですよね。

結局、普通を超えて頑張ったところで無理は続きません。売り上げは良くても楽しくない。だから転々には自分たちにとっての普通を詰め込めたらいいなと思っています。ま、売り上げなくても続けられませんけどね(苦笑)。

 
 
 
 
 
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山奥の古民家カフェに変わった本屋さんがあったり、

 
 
 
 
 
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カフェなのになぜか焚火やキャンプができたり、

 
 
 
 
 
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砂利でコーヒーが飲めたり、

無秩序でヘンテコなお店に思われるかもしれませんが、全部僕らにとっての普通なのです。あ、いや、訂正します。「JaliPAY」はさすがにオカシイと思います。けど楽しい。「え、JaliPAYって何ですか?」と拾ってもらえたときの喜び、プライスレス!「砂利でコーヒーが飲めるんですよ」と説明した上での「え、どういうこと?」という困惑の表情、ご馳走様です!「じゃあ今度は砂利もってきますね!」とノッてくれるお客様、もう友達です!

 

もう一つ当たり前ですが、誰だって好きなことを好きなだけしたいですよね。それって普通の欲望ですけど、もしそれが叶うとしたら特別なことだと思います。きっと僕らにとって転々はそれを目指す遊び場のようなだという気がします。ただ、現実的には、時間やお金や様々な事情がそれをなかなか叶えさせてくれませんが、だからこそ普通のことができるって案外特別なことなんじゃないかと思ったりします。

もしこの特別が叶ったら、飛びあがって喜ぶのではなくて一日中にやにやしていると思います。それを「幸せ」と呼んでも良い気がします。

 

みなさんとって何が普通で何が特別で何が幸せですか?

考えるだけでわくわくするし、きっとにやにやしちゃいますよ。

 

それではまた。

前回のコラムはコチラ↓↓↓

小柳卓巳

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1981年生まれ、やや瘦せ型のメガネの右利き。平凡な幼少期を経て平均的なITエンジニアをやりつつ、運とご縁に恵まれて妻とともに2019年に「喫茶室 転々」を...

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