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目からウロコ、綿の世界|おじいちゃん、おばあちゃん、わたしもガラ紡やります!第2回

コラム

ガラ紡で紡ぐ糸の素材は、綿です。第2回コラムのテーマは、綿のあれこれです。

 

綿は身近だが身近じゃない

みなさん、綿に毎日触れていますか? 
「毎日?」と疑問に思われた方、身にまとって
いる服のタグをみてください。たいてい綿が使われています。

もうひとつ質問です。綿が畑で育っている風景を見たことはありますか? 

毎日口にするお米は田んぼでつくられています。野菜は畑で作られています。田んぼや野菜畑は、日頃目にします。ところが、毎日触れているはずの綿は、畑ではめったに作られていません。
 
あらためて服のタグをみてください。インド製、中国製、バングラデシュ製など海外製品ばかりです。日本製とあっても、素材の綿までが日本で育ったものとはいえません。日本で縫製をすれば、日本製と表示をすることができてしまいます。

「綿は身近だが身近じゃない」。
綿について調べれば調べるほど、目から鱗が落ちました。ガラ紡とともに素材の綿の世界に、私はどっぷりはまりました。

綿のルーツは三河に

まずは綿の歴史から。初めて日本に綿が伝わったのは、799年の三河の幡豆です。東南アジアから漂着した崑崙(こんろん)人が伝えたといわれています。西尾市には、綿をまつる天竺神社があります。日本の綿のルーツは三河という縁を感じます。ただ、このときの綿はいつのまにか絶えてしまいました。

綿の栽培が全国に広がるのは15世紀末~16世紀中頃。特に三河地方は、「三河木綿」といわれる一大産地になりました。ところが外国産の綿にだんだんとおされてしまい、現在は統計上では自給率ゼロパーセントです。

 

綿と農薬 綿とファストファッション

外国産の綿について調べると、世界の諸課題に直面します。
綿の栽培には農薬が大量に使われています。1990年代には農薬使用がピークに達し、殺虫剤などは世界の使用量の20数%が綿の栽培に使われました(日本オーガニックコットン協会のHPより)。現在は使用量が減っているそうですが、他の作物よりも使用率は高いことに変わりはありません。

私も綿を育ててわかりました。綿花をつむと葉やガクがいっぱいつきます。綿を糸にするためには、取り除く手間がとてもかかります。海外では、綿の収穫するときには枯葉剤が使われるようです。ベトナム戦争で大きな問題となった枯葉剤は、今なお綿栽培で使われています。

それだけではありません。現在はファストファッション全盛です。とても安く服が流通して、服がありあまっています。海外でつくられた服がこんなに安く作られるのは、縫製作業の海外の労働者による低賃金と過酷な労働条件で支えられているからです。悲しいことに、綿の収穫には児童労働が行われており、社会問題となっています。

 

綿を自分で育てる

綿について調べていくと頭がくらくらしましたが、次には自分で育ててみたくなりました。種をいただき、名古屋に住んでいるときはマンションのベランダで、松平に住んでからは畑で育てました。今年で10年たちますが、作物量が年々増えています。

綿には大きくわけて2種類あります。和綿(アジア綿)とアメリカ綿です。綿としてよ
く知られているのは、アメリカ綿です。私は2種類とも種をいただきました。それぞれに良さがあります。

和綿は育てやすいものの、取れやすく飾りには不向きです。アメリカ綿は枝が丈夫で飾りやすく、和綿よりも綿花が大きくて見栄えがあります。
マーケットに出店したことがありますが、アメリカ綿の方が喜ばれました。

 

遺伝子組み換えされたワタを育てていた

アメリカ綿の栽培に力をいれようと計画していたときに、驚く新聞記事を目にしました。『違法なGM(遺伝子組み換え)ワタを検出 農民連食品分析センターの調査で判明』(2018年11月26日付農民新聞)という見出しです。

記事によれば、世界の綿の総栽培面積に対する遺伝子組み換えの割合が80%に及び、日本への総輸入量の9割が遺伝子組み換えです。日本ではGM綿の栽培は認められていません。

これだけGM綿が広まっていれば、種にも混入していると十分考えられます。農民連分析センターが全国に呼びかけて綿を集めて検査したところ、遺伝子組み換え綿が判明しました。私の綿も検査を依頼しました。ショックなことに、アメリカ綿は遺伝子組み換えされていました。

検出された遺伝子は、MON531とMON1445という配列でした。MONはモンサント社の開発を意味します。モンサント社は遺伝子組み換え作物の種のうち、世界シェア9割を占めています。(モンサント社は2018年にドイツのバイエル社に買収されています)。MON531は害虫抵抗性の性質です。チョウや蛾が葉を食べると消化不良をおこします。MON1445は除草剤がまかれても、綿は枯れずに耐えられます。MON1445の綿は分析センターで初めて見つかったそうです。

GM綿がみつかったときに、私は地元の小学校で綿と糸の授業を受け持っていました。アメリカ綿の種を配布して「綿を育ててみよう」と呼びかけていました。多くの方にアメリカ綿の種をお渡ししてきました。綿の普及とガラ紡の未来を願ってのことでしたが、責任を感じました。種の廃棄を積極的に呼びかけましたが、限界がありました。「遺伝子組み換えはこうやって広がるのか」と危険を目の当たりにしました。

一方、和綿には遺伝子組み換えはありません。思い切って、アメリカ綿の栽培をやめて和綿にすべて切り替えました。初めはショックでしたが、逆に和綿を育てることで遺伝子組み換えの実態を発信しようと決意しました。

 

収穫は気持ちいい

綿は5月頃に種をまきます。6月から7月にかけては大きくは育ちません。雑草との競争のため、草負けしないように手入れします。梅雨が明けると急に成長して花が咲きます。和綿の花弁は涼しげなクリーム色で、中心部分はえんじ色です。同じアオイ科のオクラ
の花とそっくりです。

花は一日でしぼみ、じきにコットンボールとよばれる実をつけます。秋になると、はじいて綿が顔を出します。9月から12月にかけて長い期間収穫できます。
綿の収穫体験を企画すると、「ふわふわだぁ~」「かわいい~」「きもちいい~」という歓声があがります。晴れた日の収穫には、綿におひさまのぬくもりがつまっているあたたかさです。

私たちが普段、肌に一番よくふれているのは綿だからでしょうか。「いやされる」という声もがきかれるので、多くの方に本物の綿に触れてほしいです。

 

綿、糸、布の地産地消をめざして

「衣食住」の営みのうち、食はいわずもがな、住の分野でも「豊田産の木材を使おう」といわれるようになりました。しかし、布や服の「地産地消」はあまりきかれません。

綿に包まれて人は生きています。私がこだわりたいのは、「綿、糸、布」の地産地消です。ガラ紡ならそれができると妄想しています。あわせて、綿からみえる現代社会の諸矛盾や課題を提起したいと考えています。

妄想から突っ走ったガラ紡と綿への思い。いざ踏み出すと、さまざまな出逢いが紡がれていきます。

それはまた次回に。

野々山大輔

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1971年生まれ。2014年に名古屋から松平地区へ移住。明治時代より続いたガラ紡工場の孫(工場は2000年に廃業)。大給城址のふもとで里山暮らしをしつつ、ブ...

プロフィール

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  1. もちづきちあき

    こんにちは。
    私は羊毛を紡いでいます。
    綿は今まで紡いだことはありませんが、ガラ紡は知っています。
    原料は違いますが、ふわふわの状態のものが、スピンドルで紡がれて糸になるのはとても楽しいです。

    この後の記事を楽しみにしています。

    • 野々山大輔野々山大輔

      羊毛を紡がれているのですね。羊や綿、そして絹や麻などの自然素材の糸の風合いに、私も魅了されています。
      今日、綿の木を全部抜き終えて、今年の畑じまいをしました。年明けから冬仕事の、ガラ紡で糸紡ぎをします。
      コラムを楽しみにして下さり、うれしいです。

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