植物で秋を感じる【今だから、からだで感じたい森の植物5回】

コラム

日本の自然の最大の特徴は、はっきり四季の変化があることです。その中でも秋は、四季の変化を実際の動植物だけでなく、感情の変化でも感じることができる季節です。
今回は草の花や木の実を通して秋を感じられる、愛知県緑化センターにある昭和の森を紹介しましょう。緑化センターでは、四季を通して、自然に関するいろいろな講座を開催していますので、それに参加するのも良いでしょう。

イラスト:北岡明彦

 

(その1)シラタマホシクサ(ホシクサ科)

漢字で書くと「白玉星草」、何と良い表現でしょう。本物の可愛らしい姿を、100%表しています。

シラタマホシクサは、世界中で愛知県・岐阜県・静岡県・三重県の東海地方4県だけにのみ生育する非常に貴重な植物です。水が常に浸み出ている湿地にだけ生える一年草(春に種子から芽生え、秋には花が咲いて種子を実らせて枯れてしまう草本植物)で、大抵、食虫植物のモウセンゴケやミミカキグサの仲間と一緒に生えています。

真っ白く見えるのは、小さな花の集まりで、萼(がく)の外側に1㎜に満たない白色の短毛が密生することから白玉となります。虫めがねで花を見ると、黒い点が見えますが、これがオシベです。

シラタマホシクサなど湿地の植物は、私たちが踏みつけると痛んでしまいますので、木道や遊歩道からの観察だけで、絶対に湿地に踏みこまないようにして下さいね!

 

(その2)コバノガマズミ(レンプクソウ科)

 

秋は、木の実を楽しむ季節です。中でも、長さ5㎜程の赤い実が房状に熟しているガマズミの仲間が目につきます。
春に、白い小さな花が房状に咲きます。昭和の森には、ミヤマガマズミ・コバノガマズミ・ガマズミの3種類が生育します。区別は葉でおこない、表面に毛がなく深緑色をしているのがミヤマガマズミ、表面に短毛が生えてフカフカし、葉が小さいのがコバノガマズミ、葉が大きいのがガマズミです。中でもコバノガマズミが一番普通に見られます。

赤く熟した少し平ぺったい実は「酸っぱ美味しい」味がして、ちょっと疲れた時に口にすると、気分がシャキっとして、元気回復します。ぜひ一度食べてみて下さい。そして、果肉を食べたあとは、口に残った種子を、土のある林にプッと捨ててくださいね。コバノガマズミは、きっと大喜びしています。

 

(その3)コナラ(ブナ科)

秋に野山を歩いていて、一番目につくのがコナラのどんぐりです。どんぐりはブナ科樹木の実の総称で、昭和の森では、野生種がコナラ・モンゴリナラ・アベマキ・クリ・アラカシ・シラカシ・ツブラジイの7種類見られるほか、植栽されたいろいろな種類もありますので、ドングリくらべをするのに最適です。

中でも一番多いのがコナラです。落葉広葉樹で、自然界での樹命は100年程度、最大で太さ60センチ、高さ20メートルになります。しかし、尾根の乾燥が激しく土の養分がほとんどない所では、太さ20センチ、高さ5メートルにしかなりません。そんな所では、どんぐりが目の前で実っていますので、じっくり観察ができます。

山道を歩いていると、緑色のドングリが葉を2~3枚つけたまま落ちているのを見かけることがあります。これは、ハイイロチョッキリという体長1センチ程の小さなゾウムシの仲間が、ドングリに卵を1個産みつけて、チョッキリと切り落としたものです。殻斗(かくと)からドングリを取り出してよく観察すると、必ず根元近くに、ごく小さな黒い点が1個あります。それが、ハイイロチョッキリの雌が卵を産みつけた跡痕です。小さな昆虫がドングリに穴をあけて卵を産み、小枝を切り落とす、何てすごいのでしょう。一度観察してみて下さい。

涼しくなった秋は、野山を散歩して自然観察するのに最高の季節です。
特に木の実や秋の草花は数多く見られますので、ぜひみんなで野山へ出かけましょう。

 

北岡明彦

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1954年生まれ。名古屋大学農学部林学科卒。長年、愛知県の林務課に勤める。2005年度より新設された豊田市森林課へ出向。根っからの昆虫大好き少年が、植物・野...

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